【地理】化石燃料|石炭・石油・天然ガスの分布と特徴をわかりやすく解説

化石燃料は、現代のエネルギーを支える最も重要な資源です。地理では「どこで産出されるのか」「輸入先・輸出先はどこか」「どのように運ばれるのか」がよく出題されます。本記事では、石炭・石油・天然ガスの特徴と世界の分布、主要な生産国・輸出国・輸入国を体系的にまとめて解説します。高校地理の学習者はもちろん、大人の学び直しにも最適です。シェール革命やOPECなどの内容は省き、基礎知識にしぼってわかりやすく説明します。

  1. 化石燃料とは?3つの種類と成り立ち
  2. 石炭・石油・天然ガスの共通点
    1. ① 生物がもとになってできた
    2. ② 地中深くで高い圧力と温度を受けて変化
    3. ③ 火力発電の燃料になる
    4. ④ 枯渇する資源である
  3. なぜ「化石」なのか
    1. ① 数千万年前の生物がもとになっているから
    2. ② 人類が使っても自然にはすぐ再生しない
    3. ③ 長い地質時代を経てできた資源である
  4. 現代でも化石燃料が使われ続ける理由
    1. ① エネルギー密度が高い(多くのエネルギーが取り出せる)
    2. ② 安定して大量に供給できる
    3. ③ 世界のエネルギーインフラが化石燃料に依存している
    4. ④ コストが比較的安い
    5. ⑤ 再生可能エネルギーは安定供給に限界がある
  5. 石炭|古期造山帯に多いが新期造山帯にも分布
    1. 世界の主な産地(古期造山帯中心だが例外も)
      1. ■ 主な産地(古期造山帯・例)
      2. ■ 例外:新期造山帯にも産地あり
    2. ★覚えておくべきポイント
    3. 中国が世界の50%以上を生産
      1. ■ 中国で石炭が多い理由
      2. 中国の次に多い国
    4. 石炭の主要輸出国(インドネシア・オーストラリア・ロシア)
      1. ① インドネシア(世界最大の輸出国)
      2. ② オーストラリア
  6. ③ ロシア
      1. ■ 重要:生産国と輸出国の違い
    1. 石炭の輸送方法(バラ積み船)
      1. ■ バラ積み船の特徴
      2. ■ なぜ安いのか?
      3. ★覚えるポイント
  7. 石油|中東に多い世界最大のエネルギー資源
    1. 原油と石油の違い(精製のしくみ)
      1. ① 原油(crude oil)とは?
      2. ② 石油(petroleum)とは?
      3. ③ 精製のしくみ|「分留(ぶんりゅう)」
  8. 原油の世界分布|中東の特徴
    1. ① 中東が石油の宝庫である理由
    2. ② 中東の主要産油国
    3. ③ 中東の特徴のまとめ
    4. 原油生産国ランキング(ベスト10)
    5. ● 生産量トップクラス
    6. ● その他の上位生産国
    7. ★地理で重要ポイント
    8. 原油輸出国ランキング(ベスト10)
      1. ● 輸出量トップクラス
      2. ● その他の輸出国
      3. ★ポイント
    9. 原油輸入国ランキング(ベスト10)
      1. ● 輸入量トップクラス(超重要)
      2. ● その他の輸入国
      3. ★地理で重要
    10. 石油の輸送方法(タンカー・ホルムズ海峡など)
      1. ① タンカー輸送の特徴
      2. ② 地理で重要な海峡・運河
      3. ③ パイプラインでの輸送(補足)
  9. 天然ガス|二酸化炭素が少ないクリーンな化石燃料
    1. 天然ガスの特徴とメリット
      1. ① 燃やしたときの二酸化炭素排出量が少ない
      2. ② 発電効率が高い
      3. ③ 使い道が多い
      4. ④ メタンが主成分
    2. アメリカとロシアで世界の40%以上を生産
      1. ● アメリカ
      2. ● ロシア
      3. ▶ 2国だけで世界の40%以上
    3. LNGとパイプラインでの輸送
      1. ① LNG(液化天然ガス)輸送
      2. ● LNGの特徴
      3. ● 輸送手段:LNGタンカー
      4. ② パイプライン輸送
      5. ● パイプラインの特徴
      6. ● LNGとパイプラインの違いの覚え方
    4. 主なLNG輸出国・輸入国
      1. ● 主な輸出国
      2. ★覚えるポイント
    5. ■ LNG輸入国(アジアが中心)
      1. ● 主な輸入国
      2. ★超重要ポイント
  10. ✔ 地理の得点ポイントまとめ(天然ガス)
  11. 化石燃料のメリット・デメリットまとめ
    1. メリット(高エネルギー密度・安定供給など)
      1. ① エネルギー密度が高い(効率がよい)
      2. ② 天候に左右されず安定供給できる
      3. ③ 大規模な発電インフラが整っている
      4. ④ 輸送・貯蔵が容易でコストが安い
      5. ⑤ 工業製品の原料としても重要
    2. デメリット(CO₂排出量・環境負荷など)
      1. ① CO₂の排出量が多い(温室効果ガス)
      2. ② 大気汚染や酸性雨の原因になる
      3. ③ 資源が偏在しており、政治的リスクが大きい
      4. ④ 枯渇する資源である(再生に数千万年)
      5. ⑤ 災害・事故のリスクがある
  12. 地理で押さえるべきポイント
    1. ✔ ① 石炭・石油・天然ガスの分布の違い
    2. ✔ ② 輸送手段の違い
    3. ✔ ③ 生産国・輸出国・輸入国の違い
    4. ✔ ④ CO₂排出量の違いを覚える
    5. ✔ ⑤ 化石燃料の“利点”と“課題”を両方言えるように
  13. 化石燃料まとめ|一問一答(全40問)
    1. 【石炭編】
    2. 【石油編】
    3. 【天然ガス編】
    4. 【化石燃料のメリット・デメリット編】

化石燃料とは?3つの種類と成り立ち

化石燃料とは、大昔の生物が地中で長い年月をかけて変化したエネルギー資源のことです。
地球上のエネルギーの多くは、この化石燃料に支えられています。

化石燃料には、主に次の3種類があります。

  • 石炭…陸上の植物が起源
  • 石油…海のプランクトンが起源
  • 天然ガス…石油と一緒にできる気体の燃料

これらは、数千万年前の生物の死骸が地中深くに埋もれ、高い圧力と温度を受けることで、長い時間をかけて変質し、燃える資源になったものです。

まずは、この3つの燃料に共通する特徴や、なぜ化石と呼ばれるのかを整理していきます。


石炭・石油・天然ガスの共通点

石炭・石油・天然ガスの4つには、大きく分けて次の共通点があります。


① 生物がもとになってできた

化石燃料は、生物起源エネルギーとも呼ばれます。

  • 石炭 → 陸上のシダ植物や森林
  • 石油 → 海にすむプランクトン
  • 天然ガス → 石油や有機物がさらに変化したもの

どれも、「大昔の生物」由来です。


② 地中深くで高い圧力と温度を受けて変化

生物の死骸が堆積し、その上に土や砂が積み重なると、高圧力・高温の環境になります。

この環境が何百万年も続くと、炭化・分解・変質が起こり、燃える資源になります。


③ 火力発電の燃料になる

化石燃料は、どれも火力発電の主要な燃料です。

  • 石炭火力
  • 石油火力
  • ガス火力

特に天然ガスは、環境負荷が比較的小さいため世界的に使用量が増えています。


④ 枯渇する資源である

石炭・石油・天然ガスは、再生に数千万年単位の時間が必要です。
人類が使うスピードのほうが圧倒的に早いため、枯渇性資源と呼ばれます。


なぜ「化石」なのか

「化石燃料」という名前は、次の理由によります。


① 数千万年前の生物がもとになっているから

化石とは、大昔の生物の痕跡が残ったもの。
化石燃料は、化石そのものではありませんが、生物の死骸がもとになっている点が共通しています。


② 人類が使っても自然にはすぐ再生しない

化石は、自然が短期間で作れるものではありません。
化石燃料も同じで、再生に膨大な時間が必要であり、人間の利用速度に追いつかないため「化石」と呼ばれます。


③ 長い地質時代を経てできた資源である

石炭や石油は、地質時代(古生代・中生代など)に生きた生物が変化してできたものです。

地球の歴史を背景にもつ資源であることが、「化石」という名前につながっています。


現代でも化石燃料が使われ続ける理由

再生可能エネルギーが増えている現代でも、なぜ化石燃料は主要なエネルギー源のままでしょうか?
その理由は次の通りです。


① エネルギー密度が高い(多くのエネルギーが取り出せる)

化石燃料は、燃やしたときに非常に効率よくエネルギーを取り出せるという特長があります。

  • 石炭 → 大量の熱を得られる
  • 石油 → 輸送しやすく燃料として優秀
  • 天然ガス → 発電効率が高い

日本でも世界でも、火力発電を支える重要燃料です。


② 安定して大量に供給できる

再生可能エネルギーとは違い、化石燃料は天候に左右されません。

  • 石炭 → 長期保存できる
  • 石油 → タンカーで世界中へ供給
  • 天然ガス → パイプラインで大量輸送が可能

安定供給できることは、現代社会にとって大きな利点です。


③ 世界のエネルギーインフラが化石燃料に依存している

発電所、工場、輸送、家庭など、世界のあらゆる場所の設備が化石燃料に合わせて作られています。

  • 火力発電 → 石炭・石油・天然ガス
  • 自動車 → ガソリン
  • 船・飛行機 → 重油・ジェット燃料

インフラが整っているため、急に完全移行するのは困難です。


④ コストが比較的安い

石炭・天然ガスは特にコストが安い燃料です。
コストが低いほど発電も安くできるため、多くの国が化石燃料を使い続けています。


⑤ 再生可能エネルギーは安定供給に限界がある

太陽光・風力は天候に左右されるため、大量の電力を安定して供給するのが難しい場面もあります。

そのため、現代でも「化石燃料+再生可能エネルギー」の組み合わせが一般的です。


石炭|古期造山帯に多いが新期造山帯にも分布

石炭は、古期造山帯(古い山脈)に多く分布するのが大きな特徴です。
ただし例外的に、新期造山帯にも産地が見られるため、「絶対に古期だけ」と覚えると間違えやすい分野でもあります。

ここでは、石炭の世界の主要産地、生産国・輸出国、輸送方法までをまとめて解説します。


世界の主な産地(古期造山帯中心だが例外も)

石炭は、古期造山帯(古い山脈)の地域で多く産出されます。

古期造山帯は、地球の歴史の中で古い時代に形成されたため、当時の植物が厚く堆積した地層が残りやすい。

■ 主な産地(古期造山帯・例)

  • アパラチア山脈(アメリカ)
  • 山西省(中国の華北地域)
  • ドネツ炭田(ウクライナ・ロシア)
  • ルール炭田(ドイツ)※近年は閉山が進む
  • インドのデカン高原周辺

これらは地理で頻出の産地名。


■ 例外:新期造山帯にも産地あり

石炭=古期造山帯というイメージが強いですが、100%ではありません。

たとえば…

  • インドネシア(新期造山帯)
  • 日本(かつての筑豊炭田など)

新しく形成された山脈の地域でも、古い地層が隆起して表面に出ている場合があります。

★覚えておくべきポイント

石炭は“古期造山帯に多い”が、“新期造山帯にも例外がある”
→「地殻変動によって古い地層が押し上げられた」などの地質的理由


中国が世界の50%以上を生産

世界の石炭生産量は 中国が圧倒的1位
なんと 世界全体の50%以上(半分以上) を中国一国で占めています。

■ 中国で石炭が多い理由

  • 石炭を多く含む古い地層が広い
  • 火力発電が多く、国内需要が非常に大きい
  • 資源輸入を減らす「エネルギー自給率の確保」が重要視される

中国の石炭産地で特に有名なのは 山西省(さんせいしょう)
地理の問題でよく登場します。

中国の次に多い国

  • インド
  • インドネシア
  • アメリカ
  • オーストラリア

石炭の主要輸出国(インドネシア・オーストラリア・ロシア)

世界の「輸出」に注目すると、生産国とは別の順位になります。
特に重要なのは次の3か国。


① インドネシア(世界最大の輸出国)

輸出量は世界トップ。
アジアに近く、日本や中国が多く輸入。


② オーストラリア

品質の高い石炭が多く、安定した供給国。
日本の発電用石炭の主要な輸入先。


③ ロシア

ヨーロッパとアジアの両方に輸出。
シベリアの炭田が中心。


■ 重要:生産国と輸出国の違い

  • 中国は生産は1位でも、輸出はほとんどしない。国内消費が大きい。
  • インドネシアや豪州は輸出を中心とする「資源国」。

石炭の輸送方法(バラ積み船)

石炭は固体なので、専用のバラ積み船(Bulk Carrier) で運ばれます。

■ バラ積み船の特徴

  • そのまま積む(袋詰めしない)
  • 大量に輸送できる
  • コストが安い

■ なぜ安いのか?

石炭は燃料として大量に使うため、輸送コストが上がると電気料金にも影響します。
バラ積み船は一度に大量を積めるため、単価が非常に安くなるのです。

★覚えるポイント

石炭=バラ積み船
石油=タンカー
天然ガス=LNG船 or パイプライン

輸送手段の違いは、地理で超頻出。


石油|中東に多い世界最大のエネルギー資源

石油は、世界で最も重要なエネルギー資源です。
発電、輸送、工業製品など、多くの場面で利用されており、国際政治にも大きな影響を与える資源として扱われています。

地理では特に、

  • 原油と石油の違い
  • 中東に集中する理由
  • 生産国・輸出国・輸入国のランキング
  • 石油を運ぶタンカーと海峡
    などが頻出ポイントです。

ここでは、石油の基礎知識を順に整理していきます。


原油と石油の違い(精製のしくみ)

地理では「原油」と「石油」が区別されることが重要です。


① 原油(crude oil)とは?

  • 地中からそのまま出てくる油のこと
  • 黒色〜茶色の粘りのある液体
  • このままでは使えない場合が多い

② 石油(petroleum)とは?

精製(せいせい)と呼ばれる工程で、原油を加熱して成分を分けてつくる燃料全般。

代表例:

  • ガソリン
  • 灯油
  • 軽油
  • ジェット燃料
  • 重油

“石油=加工された原油”と覚えるとわかりやすい


③ 精製のしくみ|「分留(ぶんりゅう)」

原油を熱すると、沸点の差で成分が分かれる。

沸点の低い順から:

  • LPG(液化石油ガス)
  • ガソリン
  • ナフサ(プラスチック原料)
  • 灯油
  • 軽油
  • 重油

石油化学工業の基礎になるため、入試でもよく問われます。


原油の世界分布|中東の特徴

世界の原油は、中東地域(西アジア)に集中しています。


① 中東が石油の宝庫である理由

約1億〜2億年前、

  • この地域は浅い海が広がっていた
  • プランクトンが大量に堆積
  • 地殻変動で石油が閉じ込められた

その結果、世界最大級の油田が形成されました。


② 中東の主要産油国

地理で覚えておくべき代表国:

  • サウジアラビア
  • イラク
  • イラン
  • UAE(アラブ首長国連邦)
  • クウェート

いずれもペルシャ湾沿岸に分布。


③ 中東の特徴のまとめ

  • 世界の確認埋蔵量の約半分
  • 生産・輸出ともに世界トップクラス
  • 日本を含むアジアが大量に輸入

石油資源は国際関係にも大きな影響を与えるため、地理でも非常に重要な項目です。


原油生産国ランキング(ベスト10)

※順位は年により変動するため、ここでは“傾向として必ず覚えるべき国”を中心に整理します。


● 生産量トップクラス

  1. アメリカ
  2. サウジアラビア
  3. ロシア

→ この3か国は常にトップ争い。


● その他の上位生産国

  1. カナダ
  2. イラク
  3. 中国
  4. アラブ首長国連邦(UAE)
  5. イラン
  6. ブラジル
  7. クウェート

★地理で重要ポイント

  • アメリカが1位になった理由 → シェールオイル(※詳細は別記事)
  • 中東諸国が上位に多い
  • 中国も生産量が大きいが輸入量も多い(後述)

原油輸出国ランキング(ベスト10)

輸出量では、中東とロシアの存在感が大きい。


● 輸出量トップクラス

  1. サウジアラビア
  2. ロシア
  3. イラク

→ “輸出”ではアメリカは上位に来ない点が重要。


● その他の輸出国

  1. カナダ
  2. UAE
  3. クウェート
  4. ナイジェリア
  5. カザフスタン
  6. アンゴラ
  7. ノルウェー

★ポイント

  • 中東とロシアが世界の石油供給の中心
  • アメリカは生産1位でも輸出はほぼしない → 国内消費が大きい

原油輸入国ランキング(ベスト10)

輸入量の上位国は、人口や工業生産が多い国が中心です。


● 輸入量トップクラス(超重要)

  1. 中国
  2. アメリカ
  3. インド

→ 中国は世界最大の輸入国。
→ アメリカは生産1位なのに輸入も多い(国内需要が巨大)。


● その他の輸入国

  1. 日本
  2. 韓国
  3. ドイツ
  4. オランダ
  5. イタリア
  6. スペイン
  7. フランス

★地理で重要

  • 日本は石油の約90%を中東に依存
  • ヨーロッパはロシアからのパイプラインに依存(※状況により変動)

石油の輸送方法(タンカー・ホルムズ海峡など)

石油は液体燃料なので、タンカー(大型の油を運ぶ船)で世界中に輸送されます。


① タンカー輸送の特徴

  • 大量輸送が可能
  • 国境を越えて運べる
  • 中東 → アジア・ヨーロッパの主要ルートで活躍

② 地理で重要な海峡・運河

石油輸送の「 chokepoint(チョークポイント=重要地点)」として特に重要なのが以下の3つ。


● ホルムズ海峡(超頻出)

  • イランとオマーンの間
  • 中東の石油タンカーが必ず通る
  • 世界の石油輸送の生命線

● マラッカ海峡(東南アジア)

  • シンガポール周辺
  • 中東 → 日本・中国・韓国のルート

→ 日本の石油輸入にも大きくかかわる。


● スエズ運河(エジプト)

  • 地中海と紅海を結ぶ
  • 中東 → ヨーロッパのルート
  • アフリカ周りよりも大幅に距離短縮

③ パイプラインでの輸送(補足)

石油は基本タンカーだが、陸続きの国同士ではパイプラインも利用される。

例:

  • ロシア → 欧州
  • イラク → トルコ

ただし天然ガスほどパイプライン依存ではない。


以下に、指定いただいた 「天然ガス」パートの本文 を、地理の重要ポイントを押さえつつ、読みやすく丁寧にまとめました。
そのままブログに貼り付けられる完成度です。


天然ガス|二酸化炭素が少ないクリーンな化石燃料

天然ガスは、化石燃料の中でも環境への負荷が比較的小さいクリーンなエネルギーとして、近年特に注目されています。
石炭や石油と同じく地中でできたエネルギー資源ですが、気体である点が大きな特徴です。

地理では、

  • 天然ガスの特徴
  • 生産国の順位
  • LNG(液化天然ガス)とパイプラインの違い
  • 輸出国・輸入国
    が頻出ポイントです。

ここでは、それぞれをわかりやすく整理します。


天然ガスの特徴とメリット

天然ガス(natural gas)は、石油に伴って産出される気体の資源であり、「非在来型ガス」や「シェールガス」なども含む広い概念です。


① 燃やしたときの二酸化炭素排出量が少ない

同じ量のエネルギーを得るとき、

  • 石炭 > 石油 > 天然ガス

の順でCO₂排出量が少なくなります。
そのため、火力発電でも天然ガスは「比較的クリーン」と評価されています。


② 発電効率が高い

天然ガスを使うガスタービン発電は、最新設備では発電効率が非常に高く、
石炭火力より低コストで運転できる場合もあります。


③ 使い道が多い

天然ガスはさまざまな用途に使われます。

  • 火力発電
  • 家庭用ガス(都市ガス)
  • 工場・化学産業の燃料

都市ガスの原料として使われるため、生活にも直結するエネルギーです。


④ メタンが主成分

天然ガスの主成分は メタン(CH₄)
無色・無臭で、安全のために匂いを付けて使われています。


アメリカとロシアで世界の40%以上を生産

世界の天然ガス生産は、少数の国に集中しています。

なかでも重要なのが アメリカとロシア の2か国。


● アメリカ

  • 世界最大の天然ガス生産国
  • シェールガス革命により生産が急増
  • 国内消費も非常に多い

● ロシア

  • 世界有数の天然ガス資源国
  • 欧州向けのパイプライン網が発達
  • 生産量の多くがヨーロッパに輸出されてきた(政治的問題により変動あり)

▶ 2国だけで世界の40%以上

地理で重要なのは、この数字です。

アメリカとロシアで天然ガス生産量の40%以上を占める

さらに上位には以下の国が続きます。

  • イラン
  • カナダ
  • カタール
  • 中国
  • オーストラリア

天然ガスは偏在性が強く、特定地域に集中していることが特徴です。


LNGとパイプラインでの輸送

天然ガスの輸送方法は、液化(LNG)するか、パイプラインを使うかで大きく分かれます。


① LNG(液化天然ガス)輸送

天然ガスを –162℃ に冷却すると液体になる。
これを LNG(Liquefied Natural Gas) と呼びます。


● LNGの特徴

  • 体積が約600分の1になる → 大量輸送が可能
  • 国境をまたぐ海上輸送ができる
  • 日本・韓国・台湾など、島国で最も重要

● 輸送手段:LNGタンカー

専用タンクを持つ大型船で運ばれる。

  • 日本の天然ガス輸入のほぼ100%がLNG
  • アジアのエネルギー供給に欠かせない

② パイプライン輸送

地上・海底に敷いた管で、長距離を輸送する方法。


● パイプラインの特徴

  • 一度整備すると大量・安価に運べる
  • 陸続きの国同士で重要
  • ロシア → 欧州への供給が代表例

● LNGとパイプラインの違いの覚え方

  • 海を越える → LNG
  • 陸続き → パイプライン

どちらが使われるかは地理的条件で決まります。


主なLNG輸出国・輸入国

最後に、地理のテストで特に問われやすい
主要輸出国・輸入国の傾向 をまとめます。


● 主な輸出国

  • カタール(世界トップクラス)
  • オーストラリア(近年急増)
  • アメリカ(シェールガスで輸出国に)
  • マレーシア
  • ロシア

★覚えるポイント

天然ガスはアメリカとロシアで生産が多いが、 LNG輸出はカタールとオーストラリアが強い。

これは「パイプライン vs LNG」の違いによるもの。


■ LNG輸入国(アジアが中心)

輸入側は圧倒的に アジア太平洋地域


● 主な輸入国

  • 日本(世界有数のLNG輸入国)
  • 中国
  • 韓国
  • インド
  • 台湾

★超重要ポイント

日本は天然ガス(LNG)のほぼ100%を輸入に依存している。

島国でパイプラインが敷けないため、LNGが生命線になっている。


✔ 地理の得点ポイントまとめ(天然ガス)

  • 天然ガスはCO₂排出が少ない
  • アメリカ・ロシアが40%以上を生産
  • LNGは–162℃で液化、LNGタンカーで輸送
  • パイプラインは陸続きで利用
  • 輸出はカタール・豪・米
  • 輸入は日本・中国・韓国

以下に、指定いただいた 「化石燃料のメリット・デメリットまとめ」パートの本文 を、受験でも使えるレベルでわかりやすく丁寧に仕上げました。


化石燃料のメリット・デメリットまとめ

石炭・石油・天然ガスは、世界のエネルギーを支えてきた中心的な資源です。
近年は脱炭素や再生可能エネルギーが注目されていますが、化石燃料がいまだに重要視される理由があります。

ここでは、化石燃料のメリットとデメリットを整理し、地理で押さえるべきポイントをまとめます。


メリット(高エネルギー密度・安定供給など)

化石燃料は、再生可能エネルギーと比較して多くの利点があります。
世界中で長く使われ続けてきたのには明確な理由があります。


① エネルギー密度が高い(効率がよい)

化石燃料は単位量あたりに取り出せるエネルギーが大きい。

  • 石炭 → 大量の熱エネルギー
  • 石油 → ガソリン・灯油などの高効率燃料
  • 天然ガス → 発電効率が非常に高い

少ない量でも大きなエネルギーを得られるため、産業や発電に向いています。


② 天候に左右されず安定供給できる

太陽光や風力などの再エネは天候の影響を大きく受けます。
一方、化石燃料は

  • いつでも一定の量を燃やせる
  • 発電量を自由に調整できる

という大きなメリットがあります。

そのため、電力の「ベースロード(基幹電源)」として利用されてきました。


③ 大規模な発電インフラが整っている

火力発電は世界中に設備が整備されており、すぐに使える状態になっています。

  • 石炭火力
  • 石油火力
  • ガス火力

特に天然ガス発電は効率が高く、近年世界的にシェアが増加しています。


④ 輸送・貯蔵が容易でコストが安い

  • 石炭 → バラ積み船で大量輸送
  • 石油 → タンカーで世界中へ
  • 天然ガス → LNG船やパイプラインで輸送

これらの輸送網が既に発達していることから、コストも安く、世界中で利用しやすいエネルギーとなっています。


⑤ 工業製品の原料としても重要

石油は、燃料だけでなく

  • プラスチック
  • 洗剤
  • 衣類の合成繊維
  • 医薬品

など、多くの製品の原料にもなる。
化石燃料は「燃やすだけではない」という点も重要です。


デメリット(CO₂排出量・環境負荷など)

一方で、化石燃料には深刻なデメリットもあります。


① CO₂の排出量が多い(温室効果ガス)

化石燃料を燃やすと大量の二酸化炭素(CO₂)が排出されます。

CO₂排出量(多 → 少)
石炭 > 石油 > 天然ガス

温室効果ガスが地球温暖化の原因となり、国際的な問題になっています。


② 大気汚染や酸性雨の原因になる

石炭や重油を燃やすことで、

  • SO₂(硫黄酸化物)
  • NOₓ(窒素酸化物)

などが発生し、大気汚染や酸性雨につながることがあります。

工業化の進んだ地域では特に大きな環境問題となりやすい。


③ 資源が偏在しており、政治的リスクが大きい

化石燃料は世界の一部の地域に集中しています。

  • 石油 → 中東に集中
  • 天然ガス → ロシア・アメリカに集中
  • 石炭 → 中国・インドなどに多い

そのため、産地の政治不安が世界供給に影響しやすいという問題があります。

(例)ホルムズ海峡、ロシアのパイプライン問題など


④ 枯渇する資源である(再生に数千万年)

化石燃料は、一度使うとなくなる資源です。
再生には地質学的時間が必要で、人間の利用ペースに追いつきません。

そのため、「持続可能性」の観点から使用削減の動きが進んでいます。


⑤ 災害・事故のリスクがある

  • 油田火災
  • タンカー事故(海洋汚染)
  • ガス漏れ、爆発事故

といったリスクも伴います。


地理で押さえるべきポイント

最後に、高校地理で得点につながる内容をまとめます。


✔ ① 石炭・石油・天然ガスの分布の違い

  • 石炭 → 古期造山帯中心(中国・インド・米など)
  • 石油 → 中東中心(サウジ・イラク・イラン)
  • 天然ガス → 米・ロシアが突出

これを正確に整理して覚えること。


✔ ② 輸送手段の違い

資源輸送方法
石炭バラ積み船
石油タンカー、重要海峡(ホルムズ海峡など)
天然ガスLNG船・パイプライン

輸送の方法は入試頻出。


✔ ③ 生産国・輸出国・輸入国の違い

特に重要なポイント:

  • 中国は石炭生産は多いが輸出は少ない
  • アメリカは原油生産1位だが輸入も多い
  • 中東は輸出国が多い
  • 日本は石油の約90%、天然ガスのほぼ100%を輸入

「生産=輸出ではない」点が地理のひっかけ問題で多い。


✔ ④ CO₂排出量の違いを覚える

石炭 > 石油 > 天然ガス
自然と比較されるので暗記必須。


✔ ⑤ 化石燃料の“利点”と“課題”を両方言えるように

  • 利点 → エネルギー密度が高い・安定供給・低コスト
  • 課題 → 温暖化・資源偏在・枯渇性

地理の記述問題でよく使う内容です。


以下に、本記事全体の内容を総復習できる一問一答(全40問) を作りました。
高校地理のテスト対策・大学受験の基礎固め・ブログ読者の復習用としてそのまま使えます。


化石燃料まとめ|一問一答(全40問)


【石炭編】

Q1:石炭はどんな生物が起源となってできた資源ですか?

A:陸上の植物

Q2:石炭が形成されるときに生まれる、植物の堆積物を何と呼ぶ?

A:泥炭(でいたん)

Q3:石炭は主にどんな地帯に多く分布しますか?

A:古期造山帯

Q4:石炭の世界最大の生産国は?

A:中国

Q5:中国の石炭生産量は世界全体の何%以上?

A:50%以上

Q6:石炭の主要輸出国トップ3をすべて答えよ。

A:インドネシア、オーストラリア、ロシア

Q7:石炭の輸送に使われる船の名前は?

A:バラ積み船(Bulk Carrier)

Q8:石炭が多い古期造山帯の例を1つ答えよ。

A:アパラチア山脈、ウラル山脈、山西省など(いずれも正解)


【石油編】

Q9:原油と石油の違いを簡単に説明せよ。

A:原油は地中からそのまま出る油、石油は原油を精製した燃料。

Q10:原油を熱して成分ごとに分ける操作を何という?

A:分留(ぶんりゅう)

Q11:石油は主にどの生物が起源ですか?

A:海のプランクトン

Q12:世界の原油埋蔵量が最も多い地域は?

A:中東

Q13:原油生産量1位の国は?

A:アメリカ

Q14:原油生産量上位3か国を答えよ。

A:アメリカ、サウジアラビア、ロシア

Q15:原油輸出量1位の国は?

A:サウジアラビア

Q16:原油最大の輸入国は?

A:中国

Q17:日本が石油の約90%を依存している地域は?

A:中東

Q18:中東から日本・中国・韓国などに向かう石油タンカーが必ず通る海峡は?

A:ホルムズ海峡

Q19:中東とヨーロッパを結ぶ重要な運河は?

A:スエズ運河

Q20:石油の海上輸送に使われる船は?

A:タンカー


【天然ガス編】

Q21:天然ガスの主成分は?

A:メタン(CH₄)

Q22:CO₂排出量が最も少ない化石燃料は?

A:天然ガス

Q23:天然ガスは気体だが、輸送のために液体にしたものを何という?

A:LNG(液化天然ガス)

Q24:天然ガスを液化する温度は約何℃?

A:−162℃

Q25:天然ガス生産量の上位2か国は?

A:アメリカ、ロシア

Q26:アメリカとロシアで世界生産量の何%以上を占める?

A:40%以上

Q27:LNGを運ぶ専用の船を何という?

A:LNGタンカー

Q28:陸続きの国同士で天然ガスを送るために使われる設備は?

A:パイプライン

Q29:パイプライン輸送が特に発達している天然ガス産出国は?

A:ロシア

Q30:近年LNG輸出量が大きい国を2つ答えよ。

A:カタール、オーストラリア(アメリカも増加中)

Q31:LNG輸入国で世界上位にあるアジアの国を3つ答えよ。

A:日本、中国、韓国


【化石燃料のメリット・デメリット編】

Q32:化石燃料のメリットの1つ「エネルギー密度」とは何を意味する?

A:少ない量で大きなエネルギーを取り出せること

Q33:化石燃料はどのような理由で「安定供給」しやすい?

A:天候に左右されず、自由に発電量を調整できるため

Q34:石油・石炭・天然ガスのうち最もCO₂排出量が多いのは?

A:石炭

Q35:化石燃料の最大の環境デメリットは?

A:温室効果ガス(CO₂)を大量に排出すること

Q36:石炭・石油・天然ガスは再生可能な資源か?

A:再生不可(枯渇性資源)

Q37:化石燃料が政治的リスクを持ちやすいのはなぜ?

A:分布が偏在し、中東・ロシアなど特定地域に集中しているため

Q38:石油の輸送で「 chokepoint(チョークポイント)」とは何か?

A:石油輸送の要所となる狭い海峡・運河のこと

Q39:化石燃料がいまだに世界の主要エネルギーである理由を1つ答えよ。

A:コストが安く、インフラが整い、安定供給できるため

Q40:地理で化石燃料を学ぶ上で最も重要な視点を1つ挙げよ。

A:分布・輸送・生産と輸出入の違いを正しく比較すること

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