世界では毎年何億人もの人々が国境を越えて旅をしています。観光は単なる「人の移動」だけでなく、「お金の流れ」も大きな意味を持ちます。本記事では、最新のデータをもとに、外国人観光客が多い国ベスト10と、それらの国が得る「観光収入(訪日ならぬ“受け入れ国”での収入)」を見ていきます。さらに、わが国日本の状況を併せて比較。高校地理の知識を土台に、今の観光の世界を理解しましょう。
世界で観光客が多い国ベスト10

2024年の国際観光客到着数ランキング(受け入れ国・地域別)の最新データによると、訪問者数が多い国・地域のトップ10は以下の通りです。
| 順位 | 国・地域 | 国際訪問者数(2024年)* |
|---|---|---|
| 1 | フランス | 102.0 百万(約1.02億人) |
| 2 | スペイン | 93.8 百万(約9,380万人) |
| 3 | アメリカ合衆国 | 72.4 百万(約7,240万人) |
| 4 | トルコ | 60.6 百万(約6,060万人) |
| 5 | イタリア | 57.9 百万(約5,790万人) |
| 6 | メキシコ | 45.0 百万(約4,500万人) |
| 7 | 英国 | 41.8 百万(約4,180万人) |
| 8 | ドイツ | 37.5 百万(約3,750万人) |
| 9 | ギリシャ | 36.9 百万(約3,690万人) |
| 10 | オーストリア | 36.0 百万(約3,600万人) |
なお、これらの国・地域は世界の観光客のかなりの割合を受け入れており、欧州が中心ですが、アメリカや中東・地中海地域も含まれています。
日本はどこに?
では、わが国日本はこのランキングでどのあたりに位置するでしょうか。
複数の情報源によれば、現在「世界全体の訪問者数ランキングではおおよそ15位前後」。
2024年には訪日外国人旅行者数が 約 3,600万人〜3,687万人 と報告され、過去最高を記録しています。 つまり、世界トップ10の国々には届かないものの、かなり上位に近い「中堅〜上位グループ」。
ただし、訪問者数だけで国の“稼ぐ力”=観光収入が見えるわけではありません。次の章で「観光収入(観光による収益)」の視点を見てみましょう。
観光収入(国際観光収入)で「稼ぐ国々」

観光は「訪問者数」だけでなく、「その国でどれだけお金を使ったか(宿泊、食事、買い物など)」が、国にとっての実質的な収入になります。2023年〜2024年のデータを見ると、次のような傾向があります。 ([Road Genius][5])
- 2023年における観光収入(国際観光収入)では、アメリカ合衆国がトップ。約 1,759億ドル(約1759億ドル)という大きな額を記録。
- 訪問者数では首位の国(フランスやスペイン)が、収入ではアメリカに及ばない例もある。これは、観光客の滞在期間、消費額、滞在形態(高級ホテル or バックパッカー)などの違いによる。
- 近年、多くの国で観光収入がコロナ前の水準を上回り、復調している。
日本の観光収入:「量」だけではなく「質」で勝負

日本について注目すべきは、訪問者数ランキングではやや上位だが、「一人あたりの消費額」や「旅行の質」が高く評価されやすい点です。ある資料では、「訪問者数ランキングで15位前後でも、観光収入では世界10位、アジア1位」という結果も紹介されています。
つまり、日本のインバウンドは「数を追う段階」から「質を重視する段階」に移行しつつある──旅行者の滞在日数が長く、買い物や宿泊、体験などにお金を使う傾向が強いことを示しています。
なぜ「訪問者数」と「収入」で差が出るのか

高校地理で学ぶ「空間的分布」「人の移動」「地域間交流」「産業と経済」の視点から考えると、以下のような要因が関係しています。
- 観光の目的や滞在スタイルの違い:観光客が「日帰り」「格安旅行」か、「長期滞在」「高付加価値旅行」かによって消費額が大きく変わる。
- 国・地域の魅力とサービスの質:歴史・文化・芸術・自然・買い物・食・娯楽など、多様な観光資源の有無。加えて、インフラ、交通、宿泊、接客のレベル。
- 為替や経済状況:円安などで訪日が割安になると外国人旅行者が増え、消費が増えることも。
- 地理的なアクセス:欧州のように国や地域が近く交通網が整っていると、観光客の流れが増えやすい。逆に、遠くアクセスに時間がかかる国は、旅行者の数が限られ、収入も変動しやすい。
- 国際関係・宣伝・政策の影響:ビザの緩和、航空便の充実、観光プロモーション、国際イベントなどが観光客数と質に影響。
このように、「どこから来て、どのように過ごすか」「その国・地域がどんな魅力・インフラを持つか」によって、同じ「観光国」であっても結果が大きく異なります。
まとめ:観光を通じてみる国際社会と日本の立ち位置
- 世界では、フランス、スペイン、アメリカ、トルコ、イタリアといった国が、訪問者数ベースで常に上位にある。
- しかし「訪問者数 ≠ 収入」。たとえばアメリカは訪問者数で3位でも、観光収入ではトップクラス。
- 日本は「数」では世界トップ10には届かないが、「収入」「旅行の質」では高く評価されており、アジアでも有数。
- 観光を「地理的な空間」「人の移動」「経済活動」「文化交流」の総合的な視点からとらえることで、「なぜこの国が人気か」「なぜこの国が稼げるか」が見えてくる。
- 特に日本のように「観光の受け入れ」と「質の高い消費」が両立する国では、持続可能な観光、地域振興、国際交流という観点から大きな意味を持つ。

