九州地方は、一年を通して温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、全国でも特色ある農業が行われています。筑紫平野では「二毛作」で米と麦を育て、宮崎平野では「促成栽培」で冬でも野菜を出荷します。
さらに、大分の「一村一品運動」や、鹿児島・宮崎の「ブランド畜産」など、地域ごとの工夫も盛んです。この記事では、九州地方の農業の特徴と、その発展の理由をわかりやすく解説します
九州地方の農業の特徴とは?
九州地方は、気候と地形の両方に大きな特徴があります。
まず、温暖で雨が多いことから、米や野菜、果物の栽培に適しています。
また、筑紫平野・熊本平野・宮崎平野などの広い平野がある一方で、シラス台地のように火山灰が積もった土地もあります。
このような環境の違いに合わせて、地域ごとに異なる農業が発展してきました。
平野では稲作や野菜づくりが盛んに行われ、山地や台地では畜産が中心となっています。
筑紫平野の二毛作|米と麦を組み合わせた効率的な農業
福岡県や佐賀県に広がる筑紫平野は、九州地方で最も広い平野です。
ここでは、「二毛作(にもうさく)」と呼ばれる農業が行われています。
二毛作とは、同じ土地で一年に二回、違う作物を育てる方法のことです。
筑紫平野では、
- 夏の「表作(メインとして作る作物)」には稲(米)を育て、
- 冬の「裏作」には小麦や大麦を育てます。
このように季節に応じて作物を変えることで、土地を無駄なく使い、農業の収入も増やすことができます。温暖な九州だからこそできる、効率的で理にかなった農業といえるでしょう。
福岡・熊本の園芸農業|ブランド化された果物と野菜
九州では、都市の周辺で行われる園芸農業も盛んです。
これは、都市に近い場所で野菜や果物、花などを栽培し、新鮮な状態で出荷できるという利点があります。
- 福岡市周辺では、いちご「あまおう」が有名です。
「あまい・まるい・おおきい・うまい」の頭文字から名づけられたブランドいちごで、全国でも人気があります。 - 熊本平野では、トマトの栽培が盛んです。ハウス栽培によって一年中安定した出荷ができるようになっています。
こうしたブランド化・高品質化の取り組みは、農業の新しい形として全国に広まっています。
宮崎平野の促成栽培|冬でも早く出荷できる仕組み
九州南部の宮崎平野では、促成栽培(そくせいさいばい)がさかんです。
促成栽培とは、ビニールハウスなどで温度や湿度を調整し、出荷時期を早める栽培方法です。
宮崎では、冬でも温暖な気候を生かして、
- きゅうり
- ピーマン
などを早い時期に出荷しています。
これにより、寒い地域ではまだ取れない時期に野菜を市場に出せるため、高い値段で売ることができるのです。
促成栽培は、農家の収入を安定させる工夫の一つとなっています。
鹿児島・宮崎の畜産業|シラス台地を生かした経営とブランド化
九州南部の鹿児島県や宮崎県では、畜産業がとても盛んです。
この地域には、火山の噴出物が積もってできたシラス台地が広がっており、水はけがよい反面、稲作には向いていません。そのため、広い土地を利用して牛や豚、鶏の飼育が発展しました。
代表的なブランドには、
- 鹿児島黒牛
- 宮崎牛
- かごしま黒豚
などがあります。
また、海外からの安い輸入肉に負けないように、
- 大規模化して効率的に飼育する
- ブランド化して高品質で販売する
などの工夫が進められています。
こうした努力によって、九州の畜産は日本有数の産地として知られています。
大分県の一村一品運動|地域の特産を全国へ
九州地方の農業を語るうえで欠かせないのが、大分県の一村一品運動です。
これは、「それぞれの村や町が、自分たちの特産品を1つ決めて育てよう」という取り組みです。
大分では、
- しいたけ
- かぼす
などが有名で、全国的なブランドになりました。
一村一品運動は、地域の農業を活性化させるとともに、観光や地産地消(地域で作って地域で消費する)にもつながっています。現在では、日本各地や海外にも広まっており、地域づくりの成功例として知られています。
まとめ|気候と工夫が生んだ「九州型農業」
九州地方の農業は、温暖な気候と地域ごとの工夫によって発展してきました。
筑紫平野の二毛作、福岡・熊本の園芸農業、宮崎の促成栽培、鹿児島・宮崎の畜産、大分の一村一品運動。
それぞれが、土地の特徴を最大限に生かした取り組みです。自然と人の知恵が作り上げた「九州型農業」は、これからも日本の食を支える大切な存在として続いていくでしょう。