北アメリカ州の農業|大規模で機械化された世界の食料倉庫

北アメリカ州は、世界でも有数の「食料供給地」として知られています。アメリカ合衆国やカナダでは、広大な土地を活かした大規模で機械化された農業が行われており、世界各地に農産物を輸出しています。本記事では、北アメリカ州の農業の特徴や、地域ごとの「適地適作」、最新のアグリビジネスの動きを、地理の基礎からわかりやすく解説します。

北アメリカ州の農業の特徴

北アメリカ州は、世界でも有数の食料供給地として知られています。
アメリカ合衆国やカナダでは、広大な土地と先進的な技術を活かした大規模な農業が行われています。農業の規模・生産量ともに世界トップクラスで、北アメリカで作られた作物は世界各地に輸出されています。

企業的で大規模な農業

北アメリカでは、企業的農業が発達しています。
これは、広大な農場を持つ経営者が労働者を雇い、トラクターやコンバインなどの大型機械を使って効率的に生産する仕組みです。
日本のように家族単位で行う小規模農業とは異なり、少人数で大量生産が可能です。そのため、北アメリカの農業は「世界の食料基地」と呼ばれています。

このような大規模農業を支えているのが、道路や鉄道、輸送技術の発達です。作物を短時間で大都市や港に運ぶことができ、国際的な輸出も容易になっています。


アグリビジネスとは?

北アメリカでは、農業を「食料を作るだけの仕事」ではなく、産業全体で支える仕組みが発達しています。
これをアグリビジネス(agri-business)といいます。

アグリビジネスとは、

  • 農作物の生産
  • 加工・販売
  • 種や肥料の開発
  • 気象情報や機械の提供
  • バイオテクノロジーによる新品種の開発

など、農業に関わるすべての仕事を総合的に結びつけた産業のことです。
この仕組みによって、生産から販売まで一体化され、効率的で利益の出やすい農業経営が可能になりました。

また、世界には「穀物メジャー」と呼ばれる巨大企業があり、世界の穀物の流通や価格に大きな影響を与えています。アメリカのカーギル社などが代表例で、これらの企業はアグリビジネスの中心的存在です。


地域ごとの適地適作(ちてきてきさく)

北アメリカ州の広大な土地では、地域ごとに気候や地形が異なるため、その土地に合った作物づくり(適地適作)が進んでいます。

ロッキー山脈周辺:肉牛の放牧

ロッキー山脈のまわりは降水量が少なく、牧草が育ちやすい草原が広がっています。
この地域では、広大な土地を利用して肉牛の放牧が行われています。
牛肉は国内での消費だけでなく、世界中に輸出されています。


グレートプレーンズ・プレーリー:小麦とトウモロコシ

ロッキー山脈の東側に広がるグレートプレーンズプレーリーは、北アメリカの代表的な農業地帯です。

  • 乾燥地帯では小麦の栽培が中心
  • 湿潤地帯ではトウモロコシを栽培

特に小麦の生産地は「世界の穀倉地帯」と呼ばれ、アメリカ中西部からカナダ南部にかけて広がっています。

乾燥地域では、センターピボット灌漑(かんがい)という方法を使って作物を育てます。
これは、中心に設置されたスプリンクラーが円を描くように水をまく仕組みで、上空から見ると円形の畑が特徴的です。

トウモロコシは、人間の食料だけでなく、家畜の飼料やバイオ燃料(エタノール)の原料としても利用されています。


五大湖周辺:酪農が盛ん

五大湖の周辺は、気候が涼しく、水や牧草も豊富です。
この地域では酪農(らくのう)が盛んで、牛乳・バター・チーズなどの乳製品を生産しています。
人口の多い都市(シカゴやデトロイトなど)が近いため、新鮮な乳製品をすぐに供給できるのも特徴です。


太平洋沿岸:果樹・野菜

アメリカ西部のカリフォルニア州などの太平洋沿岸では、温暖な気候を生かして果樹や野菜の栽培が盛んです。
特に有名なのは、

  • ブドウ(ワイン用)
  • オレンジ
  • レタス・トマト

などです。農産物はアメリカ国内だけでなく、海外にも多く輸出されています。


東南部:綿花・大豆・トウモロコシ

アメリカ南東部では、温暖で雨の多い気候を生かして、さまざまな作物が栽培されています。
昔は「綿花(めんか)」の一大産地でしたが、現在は大豆やトウモロコシなどの穀物も多く作られています。
肥沃な土地を活かした多角的な農業が発達しています。


効率化された農業システム

センターピボット灌漑とは?

乾燥地帯で使われる代表的な灌漑方法がセンターピボットです。
中心から放射状にアームを伸ばし、円形に水をまく仕組みで、上空写真では丸い模様が見られます。
この技術によって、水の少ない地域でも安定して作物を育てることができます。


フィードロットとは?

フィードロットとは、家畜を短期間で太らせるための飼育場のことです。
放牧である程度育てた牛をフィードロットに集め、穀物を中心とした餌を与えて肉牛に仕上げます。
効率的に牛肉を生産できることから、北アメリカの畜産には欠かせない仕組みです。


まとめ|世界の食料基地・北アメリカ州

北アメリカ州の農業は、

  • 広大な土地
  • 高度な機械化
  • 科学技術の導入
    によって支えられています。

地域ごとの気候に合わせた適地適作や、農業を総合的に支えるアグリビジネスなどにより、北アメリカは世界の食料基地として大きな役割を果たしています。

今後は、環境に配慮した持続可能な農業(SDGs)への取り組みがさらに進むと考えられます。


📘 ポイントまとめ

  • 北アメリカは大規模・機械化された農業が中心
  • アグリビジネスにより生産から販売まで効率化
  • 地域ごとの適地適作が発達
  • センターピボットやフィードロットで効率的な農業
  • 世界の食料基地として重要な役割を持つ

北アメリカ州の農業|一問一答

【基本問題】

Q1. 北アメリカ州で盛んな農業の特徴を2つ答えなさい。
A1. 大規模で機械化された農業・企業的農業。

Q2. 北アメリカ州の農業は少人数で大量生産できるのはなぜですか?
A2. 広大な土地を機械化して効率よく生産しているから。

Q3. 農場経営者が労働者を雇って行う大規模な農業を何といいますか?
A3. 企業的農業。

Q4. 北アメリカ州の農産物はどのように利用されていますか?
A4. 国内だけでなく、世界中に輸出されている。

Q5. 農業に関連する産業をまとめて行う仕組みを何といいますか?
A5. アグリビジネス。


【アグリビジネス・穀物メジャー】

Q6. アグリビジネスでは、どのような分野が結びついていますか?
A6. 生産・加工・販売・研究・気象情報など、農業に関わるすべての分野。

Q7. 世界の穀物の流通や価格に影響を与える巨大企業を何と呼びますか?
A7. 穀物メジャー。

Q8. 穀物メジャーの代表的な企業の一つを答えなさい。
A8. カーギル社(アメリカ)。


【適地適作】

Q9. 北アメリカ州では、地域の気候や地形に合わせて作物を作ることを何といいますか?
A9. 適地適作(ちてきてきさく)。

Q10. ロッキー山脈周辺ではどんな農業が行われていますか?
A10. 降水量が少ないため、肉牛の放牧。

Q11. グレートプレーンズやプレーリーでは主に何を生産していますか?
A11. 小麦とトウモロコシ。

Q12. 五大湖周辺ではどんな農業が盛んですか?
A12. 酪農(乳製品を生産する農業)。

Q13. 太平洋沿岸(カリフォルニア州など)では何が作られていますか?
A13. 果樹(ブドウ・オレンジなど)や野菜。

Q14. アメリカ南東部では、昔と今で作物がどのように変化しましたか?
A14. 昔は綿花が中心だったが、現在は大豆やトウモロコシも多く作られている。


【農業技術】

Q15. 乾燥地帯で使われる、円形に水をまく灌漑方法を何といいますか?
A15. センターピボット灌漑。

Q16. センターピボット灌漑の畑は上空から見るとどんな形をしていますか?
A16. 円形。

Q17. 放牧で育てた牛を短期間で太らせるための飼育場を何といいますか?
A17. フィードロット。


【まとめ・応用】

Q18. 北アメリカ州の農業が「世界の食料基地」と呼ばれる理由を答えなさい。
A18. 広大な土地で、機械化と科学技術による大量生産が行われているから。

Q19. 北アメリカ州の農業を支える近代的な仕組みを2つ答えなさい。
A19. アグリビジネスと適地適作。

Q20. これからの北アメリカ農業で重視される課題は何ですか?
A20. 環境に配慮した持続可能な農業(SDGs)。

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