中国四国地方は、山陰・瀬戸内・南四国の3つの地域に分かれています。それぞれの地域は、中国山地と四国山地、そして瀬戸内海の位置関係によって気候や自然が大きく異なります。この記事では、各地域の特徴をわかりやすく解説します。
中国四国地方の地形と地域区分
中国四国地方は、「山陰(さんいん)」「瀬戸内(せとうち)」「南四国(みなみしこく)」の3つの地域に分かれます。
これらの地域は、中国山地・四国山地・瀬戸内海の位置関係によって決まっています。
北側には標高1000メートル前後の中国山地が東西に長く連なり、南側には四国山地があります。
その間に瀬戸内海が広がり、大小さまざまな島々が点在しています。
このような地形によって、
- 北の日本海側(山陰)
- 内陸の瀬戸内海沿岸(瀬戸内)
- 南の太平洋側(南四国)
という、気候の異なる3つの地域が生まれています。
つまり、山が「気候の壁」となって、風や雨の影響を分けているのです。
冬には北西の季節風が日本海側に雪を降らせ、山を越えると乾いた風となって瀬戸内に吹き下ろします。一方、夏には南からの湿った風が四国山地にぶつかり、南四国では雨が多くなります。
山陰地方の自然と気候
山陰地方は、中国山地の北側、日本海に面した地域です。
主な県は鳥取県と島根県で、冬には雪が多く降ることで知られています。
冬に雪が多い日本海側の気候
冬になると、シベリア方面から吹く北西の季節風が日本海を渡ってやってきます。
この風は海の水分をたっぷり含んでいるため、山陰地方にぶつかると雪や雨をもたらします。
そのため、山陰地方は「日本海側の気候」に分類され、冬は曇りや雪の日が多くなります。
一方、夏は南からの湿った空気の影響を受け、蒸し暑い日が多くなります。
四季の変化がはっきりしており、冬の雪と夏の暑さという気候の特徴をもっています。
鳥取砂丘に見られる自然の力
山陰地方を代表する自然の景観が、鳥取砂丘(とっとりさきゅう)です。
日本最大級の砂丘で、長さ約16km・最大幅約2kmもあります。
日本海から吹く強い風が、長い年月をかけて砂を運び、現在のような大きな砂丘をつくりました。
砂丘の表面には「風紋(ふうもん)」とよばれる、風でできた波模様が現れます。
また、ラクダに乗る観光体験やパラグライダーなど、自然を生かした観光も盛んです。
鳥取砂丘は、風と砂がつくる地形の代表例として理科や社会の授業でもよく取り上げられます。
瀬戸内地方の自然と気候
瀬戸内地方は、中国山地と四国山地にはさまれた、瀬戸内海沿岸の地域です。
主な県は広島県・岡山県・香川県・愛媛県の一部などで、年間を通して温暖で雨が少ないのが特徴です。
雨が少なく温暖な「瀬戸内の気候」
瀬戸内地方は、北に中国山地、南に四国山地があるため、どちらの季節風(冬の北西風・夏の南東風)も山にさえぎられます。そのため、年間を通して雨が少なく、晴れの日が多いという特徴があります。冬は比較的暖かく、雪もあまり降りません。
水不足を支えるため池と讃岐平野
雨が少ない地域では、農業を行うための水が不足しやすくなります。
そのため、昔から人々は水をためる工夫をしてきました。
特に有名なのが、香川県の讃岐平野(さぬきへいや)です。
讃岐平野では、川が少なく、降水量も少ないため、
人々はたくさんのため池(ためいけ)をつくって農業用水を確保しました。
香川県には現在でも約1万4000個以上のため池があり、
全国でも最も多いといわれています。
ため池の水は、主に稲作や野菜栽培に使われ、「水の少ない土地での知恵」として今も受け継がれています。
温暖な気候を生かした農業と工業
瀬戸内地方は温暖な気候をいかして、
みかん・ぶどう・オリーブ・小麦などの栽培が盛んです。
特に広島のみかん、岡山のぶどう、香川のオリーブは全国的にも有名です。
また、瀬戸内海沿岸は地形がゆるやかで港をつくりやすく、
交通の便がよいことから工業地帯・工業地域が発達しました。
代表的なのは瀬戸内工業地域で、鉄鋼・化学・造船などの重工業が見られます。
自然をうまく利用しながら、農業と工業の両方が発展してきた地域といえるでしょう。
南四国地方の自然と気候
南四国地方は、四国山地の南側、太平洋に面した地域です。
主に高知県・徳島県南部・愛媛県南部などが含まれます。
海に面しているため、温かい海流である黒潮(日本海流)の影響を強く受けます。
黒潮の影響で冬も温暖
黒潮は、フィリピンの東から流れてくる暖かい海流で、
日本の太平洋沿岸を北上しています。
この黒潮のおかげで、南四国地方の沿岸は冬でも気温が高く、霜が降りにくいのが特徴です。
例えば高知市では、1月でも平均気温が約8〜9℃あり、
全国的に見ても非常に過ごしやすい地域です。
そのため、ハウス栽培の野菜や花、早生みかんなどの栽培が盛んに行われています。
夏の季節風と台風で雨が多い
南四国地方は、夏の南東の季節風が太平洋から湿った空気を運んでくるため、
一年を通して雨が多い地域です。
特に梅雨や台風の時期には大雨が降りやすく、
年間降水量が3000mmを超える場所もあります。
台風の通り道にもなりやすいため、
土砂くずれや川の氾濫に注意が必要です。
その一方で、豊富な雨と温暖な気候は森林や川の恵みを育てています。
豊かな自然と人々のくらし
南四国を代表する自然のひとつが、四万十川(しまんとがわ)です。
四万十川は「日本最後の清流」とも呼ばれ、
支流を合わせて流域には多くの動植物が生息しています。
川には橋脚を持たない「沈下橋(ちんかばし)」があり、
増水しても流されにくいように設計されています。
自然と共に生きる人々の知恵を感じることができます。
また、南四国は太陽の光が強く、海も山も美しいため、
観光業や漁業も盛んです。
高知県の桂浜(かつらはま)や足摺岬(あしずりみさき)など、
自然の景勝地が多く観光客にも人気です。
南四国の気候のまとめ
- 黒潮の影響で冬も温暖
- 夏は雨が多く、台風が通りやすい
- 森林・河川・海が豊かで、自然と共に生きる暮らしが続く
このように、南四国地方は「温暖・多雨・自然が豊か」という三拍子がそろった地域です。
地域ごとの比較まとめ
中国四国地方は、「山陰」「瀬戸内」「南四国」の3つの地域で、地形・気候・生活のしかたが大きく異なります。それぞれの特徴を表にまとめてみましょう。
| 地域名 | 気候の特徴 | 代表的な自然 | くらし・産業の特徴 |
|---|---|---|---|
| 山陰地方 | 冬に雪が多く、夏は蒸し暑い(日本海側の気候) | 鳥取砂丘、中国山地 | 米作りが盛ん。雪どけ水を農業に利用。 |
| 瀬戸内地方 | 雨が少なく、温暖で晴れの日が多い(瀬戸内の気候) | 瀬戸内海、ため池、島々 | 果樹栽培や工業が発達。「ため池」の多い讃岐平野。 |
| 南四国地方 | 雨が多く、冬も温暖(太平洋側の気候) | 四万十川、黒潮、足摺岬 | 台風が多いが、自然が豊か。農業・漁業・観光が盛ん。 |
このように、山と海の位置関係によって気候が変わり、それが人々のくらしや産業にも影響していることがわかります
まとめ|地形と気候のつながりを理解しよう
中国四国地方の自然環境は、北の日本海から南の太平洋まで、わずか数百キロの間に大きく変化しています。
- 中国山地と四国山地が「気候の境目」になっている
- 山陰は雪が多く、瀬戸内は晴れが多く、南四国は雨が多い
- それぞれの自然条件に合わせて、人々は生活や産業を工夫してきた
