私たちが毎日着ているTシャツや制服、コート、ジーンズ。これらの衣類は、どこでどのように作られているのでしょうか。
その中心となるのが繊維産業です。
繊維産業は、綿花や羊毛などの天然繊維、ポリエステルなどの化学繊維を原料として、糸や布、衣類へと加工する産業です。中学校の地理や高校地理でも重要な単元で、入試や定期テストにもよく出題されます。
この記事では、中学生・高校生向けに、繊維産業のしくみ、日本と世界の特徴、ランキング、重要用語までをわかりやすく解説します。
繊維産業とは何か

原料の種類(天然繊維・化学繊維)
繊維産業の出発点は「原料」です。原料は大きく2種類に分かれます。
天然繊維
- 綿(めん)…綿花から作られる。Tシャツなどに多い。
- 羊毛(ようもう)…羊の毛。セーターやコートに使われる。
- 絹(きぬ)…カイコのまゆから作られる。高級衣料。
化学繊維
- ポリエステル…石油を原料とする。しわになりにくい。
- ナイロン…丈夫で軽い。スポーツウェアに多い。
- アクリル…保温性が高い。セーターなど。
現在の衣類は、天然繊維と化学繊維を混ぜて作られることが多いのが特徴です。
加工の流れ(紡績→織物→縫製)
繊維産業は、次のような流れで進みます。
- 紡績(ぼうせき)
原料を細い糸にする工程。 - 織物(おりもの)
糸を組み合わせて布にする工程。 - 縫製(ほうせい)
布を裁断し、縫い合わせて衣類にする工程。
このように、原料 → 糸 → 布 → 服 という段階を経て完成します。
労働集約型産業とは
繊維産業は労働集約型産業と呼ばれます。
これは「多くの人手を必要とする産業」という意味です。
衣類の縫製などは細かい作業が多く、機械だけでは難しいため、人の手が必要になります。そのため、人件費(給料)が安い国ほど有利になります。
繊維産業の歴史

産業革命とイギリス
18世紀のイギリスでは、産業革命が起こり、繊維工業が急速に発展しました。
蒸気機関や機械の導入によって、大量生産が可能になったのです。
日本の製糸業と富岡製糸場
日本では明治時代に製糸業(生糸づくり)が発達しました。
特に有名なのが富岡製糸場で、日本の近代工業の出発点といわれています。
生産拠点が途上国へ移った理由
かつてはイギリスや日本などの先進国が中心でしたが、現在は中国・バングラデシュ・ベトナムなどの途上国に移りました。
理由は、
- 人件費が安い
- 労働力が豊富
- 大量生産に向いている
ためです。
世界の繊維産業の特徴

アジアに多い理由
現在、繊維産業の中心はアジアです。
理由は、
- 人件費が安い
- 人口が多く労働力が豊富
- 工場が集まりやすい
ことにあります。
中国、インド、バングラデシュ、ベトナムなどが代表的です。
ヨーロッパの高級ブランド(イタリア)
一方で、高級衣料品はヨーロッパで作られることもあります。
特にイタリアやフランスはブランド力が強く、「品質」と「デザイン」で勝負しています。
ファストファッションとファブレス企業
近年は、ファストファッションと呼ばれる安価で流行の早い衣料が広まりました。
先進国のアパレル企業は、
- デザインや企画は自社で行う
- 生産は途上国の工場に委託する
ことが多くなっています。
このように、自社で工場を持たない企業をファブレス企業といいます。
世界のランキング

繊維製品(糸・布)の輸出国ベスト5(代表例)
- 中国
- インド
- トルコ
- パキスタン
- ベトナム
衣類の輸出国ベスト5(代表例)
- 中国
- バングラデシュ
- ベトナム
- トルコ
- インド
※年によって順位は変動しますが、アジア諸国が中心である点は共通しています。
日本の繊維産業

日本は現在、世界最大の生産国ではありませんが、技術力の高い繊維産業を持っています。
盛んな工業地域・地帯(軽い紹介)
- 阪神工業地帯(大阪・神戸周辺)
- 中京工業地帯(名古屋周辺)
- 北陸工業地域(福井・石川・富山)
北陸地方は特に合成繊維の技術が高いことで知られています。
繊維産業と環境問題

石油とポリエステル
ポリエステルは石油を原料とするため、資源問題と関係しています。
水の大量消費
綿花の栽培や染色工程では大量の水を使います。
そのため、水不足や環境汚染の原因になることもあります。
リサイクル繊維・サステナブル
最近は、ペットボトルを再利用した繊維など、環境に配慮したサステナブルファッションが注目されています。
重要用語まとめ
- 紡績:原料を糸にすること
- 織物:糸を組み合わせて布にすること
- 縫製:布を縫って衣類にすること
- 労働集約型産業:多くの人手を必要とする産業
- ファブレス企業:自社で工場を持たない企業
まとめ
繊維産業は、天然繊維や化学繊維を原料に、糸・布・衣類へと加工する産業です。
多くの人手を必要とするため、現在はアジアの途上国が中心となっています。一方で、ヨーロッパでは高級ブランド品の生産が行われています。
また、ファブレス企業の増加や環境問題への対応など、繊維産業は今も変化を続けています。
日常生活に身近なテーマでありながら、地理・歴史・経済・環境がすべて関係する重要な分野といえるでしょう。
