微生物とは、目で見えないほど小さい生物の総称です。ミジンコなどの甲殻類も微生物に含まれます。
ただし、今回紹介する本では「細菌、菌類、ウイルス」の解説が中心です。ミジンコのような生物(プランクトン)は紹介されていません。
また「ウイルスは生物ではない」という意見もありますが、本書でウイルスは微生物として扱われています。
細菌、菌類、ウイルスのちがい
食中毒や病気をもたらして害になるものもいれば、味噌や酒、抗生物質の材料となり有益なものもいます。本書を読んで特に印象に残った「有益な、または害になる微生物」を紹介します。
有益な微生物
堆肥をつくる
堆肥とは、生ゴミ、家畜の糞尿にふくまれる炭水化物、脂肪、タンパク質が微生物によって分解されたものです。堆肥の役割は、通気性、透水性、養分の保持性をよくすることです。
堆肥は2段階のプロセスでつくられます。
第1段階
- 炭水化物などが分解される過程で微生物(好熱性細菌)が増殖する
- このとき50~80℃の熱が発生する
- この熱によって病原菌や寄生虫卵が死滅する
第2段階
- 第1段階で分解されなかったタンパク質、脂肪などが30~40℃でゆっくり分解される
- この段階は、堆肥の熟成期間とよばれ多種多様な微生物が増殖する
- これら微生物のおかげで良質な堆肥となる
堆肥が生ごみや家畜の糞尿からつくられることは知っていましたが、微生物の活動で80℃にもなる高熱が発生し病原菌や寄生虫卵を死滅させているとは意外です。薬で消毒したり、人為的に加熱処理をしているものとばかり思っていました。
下水処理に役立つ微生物
微生物は下水処理にも役立っています。下水処理場では活性汚泥法という微生物を利用した分解処理をしています。
下水処理のプロセス
- 沈殿池で、下水中の固形物を取り除く。
- 下水を反応槽へ送る。
ここには活性汚泥があり、その中に微生物がいる。 - この微生物は、酸素があれば活発に呼吸する好気性菌。
人間と同じように、呼吸をするときに「有機物と酸素」から「生きるためのエネルギー」を取り出して「二酸化炭素と水」に変える。 - 処理した下水は最終沈殿池に送られ、上澄みが殺菌されて川や海に流される。