内容
生徒と先生の対話形式。生徒は「ソクラテスとニーチェ」しか名前が出てこないほど哲学を知らない。それくらいのレベルの人に「ニーチェの哲学」がどんなものであるのかを、先生が解説していく。僕も生徒と同じくらい哲学がなんなのかわかっていないので、これくらいレベルを下げて説明してもらえると助かる。
例え話がうまい
哲学にはちょこちょこ専門用語が出てくる。倫理の教科書に出てきた言葉だ。「AはBを唱えた」というような形で人物名や名言を覚えていても、それがどういう意味なのかくわしい内容はわからない人は多いと思う。僕もそうだ。教科書に載るほどすごい言葉なのか?と思っていた。本書は、そうした用語について、わかりやすい例え話を用いて説明している。
読むきっかけ
『史上最強の哲学入門』を読んだのがきっかけ。「ニーチェ面白れぇ。よし!いっちょ、読んだるか」と思い、『ツァラトゥストラ』に挑戦し撃沈。「あ~、『神は死んだ』ってここで言うんだ」という発見はあったが、最後まで読み通すことはできなかった。
そこで『ツァラトゥストラ』に再挑戦する前に、『最強のニーチェ』で予習することにした。『史上最強の哲学入門』であれだけ楽しくわかりやすく哲学を解説していたのだ。本書もおもしろいにちがいないという思いで読んだ。
ニーチェが考えたこと
1.人生に意味はない。だから自分で意味を与えなくてはならない。
2.キリスト教を奴隷道徳だと批判
そもそも哲学って何?
哲学というと、愛や正義、何のために生きるのかといった価値観について考える学問だと漠然と思っている人は多いのではないかだろうか?。その考えはあながち間違いではないようだ。
本書によると哲学とは「物質を超えたもの」を考える学問だそうだ。
科学は生物、岩石、原子などあらゆる物質について考える。数学や歴史は物質について考えるわけではないが、誰もが納得するような答えや事実の積み重ねがある。
それに対して哲学が対象とする価値観には正解がない。
哲学は大きく2つに分かれる
哲学は2つに分類できるそうだ。白哲学(本質哲学)と黒哲学(実存哲学)だ。
白哲学は「生ききる意味」、「愛とは?正義とは?」というようなことについて考える哲学。僕のような門外漢がなんとなくイメージするやつ。哲学の本流はこっちらしい。
では、黒哲学とは何なのか?それは現実の存在について考える哲学だ。白哲学の愛、正義などは、国や時代でそれぞれ異なる。誰にでも通用するものではない。黒哲学は、そういうことに目を向けるのは不毛だと言って白哲学を批判する。
では現実の存在とは何なのか?モノや数なら科学、数学などのことを言っているのか?黒哲学のいう「現実の存在について考える」とは、「愛や正義、人生の意味などを前提にして物事を考えるのはやめよう」ということ。
黒哲学は東洋哲学に似ている
黒哲学は神、道徳、未来あらゆる意味を否定する。この全てを否定するところ般若心経に似ている。『史上最強の哲学入門(東洋哲学)』を読んだことのある人はそう思ったと思う。まだ読んでいないなら読むことをおすすめする。本来の仏教がどういうものなのかをわかりやすく解説している。
そうした価値を否定してしまったら、人生がつまらなくなるのではないか?それに対してニーチェはこう答える。「今この瞬間を肯定して生きよ」と。
具体的な方法は身体の感覚を意識する。足の裏床に触れている感触だったり、呼吸をするときの胸、腹の感覚だったり。瞑想、座禅と同じだ。
ちなみに「今この瞬間に注目すべき」だとアドラーも言っている。『嫌われる勇気』に書いてあった。