ラテンアメリカは、アンデス山脈やアマゾン川に代表されるように、ダイナミックな地形と多様な気候をもつ地域です。本記事では、ラテンアメリカの地形・気候・植生・主要河川を、はじめて学ぶ人にもわかりやすく整理します。高校生の定期テスト・共通テスト対策、また大人の学び直しにも役立つ内容です。
ラテンアメリカとは?|地形と気候がつくる多様な地域
ラテンアメリカとは、メキシコから南アメリカ最南端のアルゼンチン・チリまで広がる、スペイン語・ポルトガル語を中心とした地域を指します。
地理的には、北アメリカ大陸の一部(メキシコ)と、中央アメリカ・カリブ海沿岸、南アメリカ大陸を含む広大なエリアです。
この地域は面積が非常に大きく、赤道付近の熱帯地域から、南端の高緯度帯(フエゴ島付近)までをカバーしているため、自然環境が大きく変化します。
ラテンアメリカの範囲(メキシコ〜アルゼンチン)
- 北端:メキシコ(北緯約32度付近)
- 中央:カリブ海沿岸(キューバ・ジャマイカなど)
- 南端:アルゼンチン・チリ(南緯55度付近)
この広い範囲により、
「熱帯雨林」「サバナ」「草原」「砂漠」「高山気候」「温帯」
など、さまざまな自然環境が見られます。
自然環境の多様性が大きい理由
ラテンアメリカの自然環境が多様であるのは、次の4つが大きく関係しています。
① 緯度差が大きい
メキシコからアルゼンチンまで南北に広がるため、
- 赤道付近…高温多雨の熱帯気候(アマゾン)
- 中緯度の地域…温帯(アルゼンチンのパンパ)
- 南端…冷帯に近い気候(パタゴニア)
というように、気温や降水量が大きく変化します。
② 高度差(標高差)が大きい|アンデス山脈の影響
ラテンアメリカ西側にはアンデス山脈が連なり、標高は4,000m級の山々が続きます。
標高が高いと気温が低くなるため、同じ緯度でも
- 低地:熱帯
- 中腹:温帯
- 高地:寒帯・高山気候
と、垂直方向に気候帯が変化する(垂直的自然帯)のも特徴です。
③海流(寒流・暖流)の影響
特に南アメリカ西岸は
- フンボルト海流(寒流)の影響で、
本来は熱帯に近いのに気温が低く、雨が少ない地域があります。
例:ペルー・チリの沿岸が乾燥する → アタカマ砂漠の形成
一方、大西洋側は暖流の影響を受け、比較的湿潤です。
④ 地形の違い(西高東低)
- 西側:アンデス山脈(新期造山帯)
- 中央〜東側:高原(ブラジル高原・ギアナ高地)
- 大西洋側:低地
という構造になっているため、降水量や植生が地域ごとに大きく異なります。
まとめ
ラテンアメリカは
- 南北方向の広がり(緯度差)
- 標高の違い(アンデス山脈)
- 寒流・暖流の影響
- 地形の差(西高東低)
によって、世界でも特に自然環境が多様な地域となっています。
ラテンアメリカの地形|西高東低の大陸構造を理解する
ラテンアメリカの地形は、「西側が高く、東側が低い(西高東低)」という明確な特徴があります。これは、太平洋側に新期造山帯のアンデス山脈が走り、中央〜東側に古い安定陸塊が広がっているためです。
安定陸塊のブラジル高原・ギアナ高地|古い地形で資源が豊富
ラテンアメリカの中央〜東側には、
・ブラジル高原
・ギアナ高地
が広がっています。
これらは、地質年代が非常に古い安定陸塊(楯状地)に属します。
● 安定陸塊の特徴
- 地震・火山がほとんどない
- 地形はなだらか
- 風化・侵食が長く続き、土壌はやせていることが多い
- 鉄鉱石などの鉱産資源が豊富(カラジャス鉄鉱床など)
ブラジル高原は国土の大部分を占め、コーヒー栽培・大豆栽培・牧畜などの農業の中心地にもなっています。
新期造山帯のアンデス山脈|火山と地震の多発地帯
ラテンアメリカの地形の中で最も特徴的なのが、太平洋側に沿って延びるアンデス山脈です。
● アンデス山脈の基本
- 北アメリカのロッキー山脈から連続する環太平洋造山帯(新期造山帯)
- 長さ約7,000km、世界でも最長級
- 標高6,000m級の山々が連なる
- 火山・地震が集中する
● なぜ火山・地震が多いのか?
理由は、
ナスカプレートが南アメリカプレートに沈み込む「プレート収束境界」にあるため。
この地域には
- ペルー海溝
- チリ海溝
があり、巨大地震の震源になることも多いです。
● 高山都市が発達
アンデスには標高の高い都市が多く、
- ボリビア:ラパス(約3600m)
などが有名です。
西高東低の地形配列|雨の降り方も変わる
南アメリカ大陸の地形は、西から東へ向かって傾くようになっています。
● 典型的な地形の並び方
- 西:アンデス山脈(非常に高い)
- 中央:高原(ブラジル高原・ギアナ高地)
- 東:大西洋側の低地
この配列により、気候にも大きな差が生まれます。
● 気候への影響
- アンデスが太平洋側の湿った空気を遮る → チリ北部は乾燥 → アタカマ砂漠
- ブラジル高原〜大西洋側は湿潤 → 人口・都市が集中
この「西高東低」は、地形・気候・農業・人口分布すべての土台となる重要ポイントです。
主要河川|アマゾン・オリノコ・ラプラタの特徴を比較
ラテンアメリカには世界的に重要な大河が3つあり、地形や気候、植生と深く結びついています。
ここでは、アマゾン川・オリノコ川・ラプラタ川の3大河川の特徴を比較しながら理解しましょう。
アマゾン川|流量世界一・熱帯雨林セルバをつくる大河
アマゾン川は、流量世界No.1を誇る地球規模の大河です。
● アマゾン川の特徴
- 源流:アンデス山脈
- 河口:大西洋
- 世界最大の流域面積
- 支流が非常に多い(ネグロ川など)
● 気候・植生との関係
アマゾン川流域は一年中気温が高く、降水量が多い熱帯雨林(セルバ)が広がります。
植物・動物の種類が非常に多く、生物多様性が世界最大級です。
● 重要ポイント
- アマゾン流域=Af(熱帯雨林気候)
- 世界最大の熱帯雨林 → CO₂吸収源として重要
- 伐採・焼畑による環境問題も高校地理の頻出テーマ
オリノコ川|乾季と雨季がはっきりする「リャノ」を潤す大河
オリノコ川は、南米北部のベネズエラ・コロンビアを流れる大河です。
● オリノコ川の特徴
- 源流はギアナ高地
- カリブ海に近い地域を流れる
- 流域の気候はAw(サバナ気候)
● 流域の植生:リャノ
オリノコ川周辺には、
草原と低木が広がるサバナ(リャノ)
が広がります。
リャノは
- 乾季に枯れる
- 雨季に青々と茂る
という季節性が特徴で、
牛の放牧が盛んに行われています。
ラプラタ川|温帯の草原パンパを潤す川
ラプラタ川は、
アルゼンチン・ウルグアイ・パラグアイなど南米南東部を流れる大河で、河口部は巨大なラプラタ河口を形成します。
● ラプラタ川の特徴
- 中緯度(温帯)に位置
- 河川は「パラナ川」「ウルグアイ川」などが合流して形成
- 河口は非常に幅が広い
● 流域の植生:パンパ
ラプラタ川の周囲に広がる草原はパンパと呼ばれます。
パンパは
- 肥沃な土壌
- 温帯で雨量が適度
という条件がそろい、
小麦・とうもろこしなどの穀物生産、肉牛の飼育が盛んです。
● アルゼンチンの気候とのつながり
- ブエノスアイレス周辺:Cfa(温帯湿潤気候)
- 内陸のパタゴニア:BS(ステップ気候)
そのため、パンパは農牧業の中心となっています。
ラテンアメリカの森林・草原|セルバ・パンパを覚える
ラテンアメリカには、熱帯雨林から温帯草原まで、多様な植生が広がっています。
高校地理では、以下の5つの植生帯(森林・草原)が頻出です。
セルバ/リャノ/カンポ/パンパ/グランチャコ
それぞれが気候・地形・農牧業と深く結びついているため、特徴と場所をセットで覚えていきましょう。
セルバ(熱帯雨林)|アマゾン流域の湿潤な森林
セルバは、アマゾン川流域に広がる高温多雨の熱帯雨林です。
● 特徴
- 1年中気温が高い
- 降水量が非常に多い
- 巨大な樹木が密集
- 世界最大の生物多様性
● 気候との関係
- Af(熱帯雨林気候)
- 雨季・乾季の区別がない
● 人間活動
- 焼畑農業が行われる
- 伐採・森林減少が進み、地理の重要テーマに
リャノ(サバナ)|オリノコ川流域の季節性草原
リャノは、ベネズエラやコロンビアのオリノコ川流域に広がるサバナ(草原)です。
● 特徴
- 乾季に枯れ、雨季に緑が戻る
- 草本植物中心
- 平坦な地形
● 気候
- Aw(サバナ気候)
- 乾季と雨季がはっきりしている
● 農牧業
- 雨季:牧草が育ち牛の放牧が盛ん
- 乾季:植物が枯れるため季節による経済活動の差が大きい
カンポ(ブラジル高原周辺の草原・疎林)
カンポは、ブラジル高原周辺のサバナと草原が混ざったような地帯です。
● 特徴
- 樹木がまばらに生える草原
- 乾燥にやや強い植物が多い
- 土壌の違いにより農地・牧場が形成される
● 農業との関係
- コーヒー栽培
- 近年は大豆生産が急増し、世界有数の農業地帯に
パンパ(温帯草原)|アルゼンチンの農牧業の中心
パンパは、アルゼンチンを中心とした南米南東部に広がる温帯草原です。
● 特徴
- 肥沃な土壌(黒土系)
- 草原が広がり農業に適する
- 平野が広いため大規模農業が可能
● 気候
- Cfa(温帯湿潤気候)
- 雨が十分に降る
● 農牧業
- 小麦・とうもろこしの大規模栽培
- 牛肉の名産地として世界的に有名
- エスタンシア(大農場)による大規模経営
グランチャコ(亜熱帯の疎林・草原)
グランチャコは、アルゼンチン北部〜パラグアイ〜ボリビアにかけて広がる亜熱帯の疎林・草原です。
● 特徴
- 樹木が点在する疎林
- 草原と森林が混在
- 気温が高く、やや乾燥
● 気候
- BS(ステップ気候)に近い亜熱帯地域
- 夏は暑く、冬は乾燥気味
● 農業・産業
- 綿花の栽培が盛ん
- 地域によって牧畜も行われる
ラテンアメリカの気候の特徴|60%が熱帯気候
ラテンアメリカの気候は、「熱帯気候が広い」「アンデス山脈で高度による気候差が大きい」「南北の気候変化が大きい」という3つがポイントです。
特に、60%以上の地域が熱帯気候に分類されるため、植生・農業・人口分布の基礎となっています。
ここでは、ラテンアメリカの気候を「地形・海流・緯度・高度」の視点から整理します。
熱帯気候が広がる理由|赤道周辺〜南回帰線までカバー
ラテンアメリカの大部分は、赤道付近(エクアドル〜ブラジル北部)から南回帰線(ブラジル南部)にかけて位置しています。
このため、以下の熱帯気候が広く分布します。
- Af(熱帯雨林気候):アマゾン流域(セルバ)
- Aw(サバナ気候):リャノ、カンポ
- Am(モンスーン気候):ブラジル北東部など一部
● 特徴
- 年間を通して気温が高い
- 降水量が多い地域が多い
- 熱帯雨林からサバナまで多様な自然が広がる
「ラテンアメリカ=熱帯」ではあるが、地域差は大きいことが高校地理で重要です。
アルゼンチンはCfa・BSが分布|温帯と乾燥帯が広がる南部地域
南アメリカ大陸の南部に位置するアルゼンチンは、ラテンアメリカの気候の中で例外的に温帯〜乾燥帯が広がる地域です。
● Cfa(温帯湿潤気候)
- ブエノスアイレス周辺
- 四季があり、降水量も十分
- パンパの農業を支える気候
● BS(ステップ気候)
- パタゴニア(アルゼンチン南部〜チリ南部)
- 雨が少なく乾燥
- 草丈の短い草原が広がる
ラテンアメリカの多様性を示す代表的な例です。
アンデス山脈の高山気候|高度による気温の変化が大きい
ラテンアメリカの気候でもっとも特徴的なのが、アンデス山脈に広がる高山気候です。
● なぜ高山気候が広がるのか?
アンデス山脈は標高4,000m級の山々が連なるため、
標高が高くなるほど気温が低下します。
●気温の逓減率(ていげんりつ)
標高100m上昇すると気温は約0.6℃下がる
→ 同じ緯度でも、標高で気候が変化する
● 垂直的自然帯の例
アンデス山脈では、標高が上がるにつれて植生が変化します。
- 低地:熱帯の森林
- 中腹:温帯の森林
- 高地:寒帯・ツンドラに近い植生
- 超高地:氷雪地帯
● 農業との関係
標高に応じて作物が変わることも地理の定番です。
- 低地:バナナ、サトウキビ
- 中腹:トウモロコシ
- 高地:ジャガイモ、キヌア
寒流・暖流の影響|アタカマ砂漠の形成につながる
南アメリカ西岸は、寒流のフンボルト海流の影響で冷涼で降水量が少なくなります。
● フンボルト海流(寒流)の影響
- 空気が冷やされて湿り気を持ちにくい
- 雨雲が発生しにくい
- → 世界で最も乾燥した地域の一つ「アタカマ砂漠」が形成
逆に、大西洋側は暖流の影響で湿潤となり、人口が集中しやすくなっています。
南北に長い地域のため、気候帯が多様に現れる
ラテンアメリカは、南北に大きく広がるため、以下のように気候帯が並びます。
- 赤道付近:熱帯雨林
- その南北:サバナ
- 中緯度:温帯
- 南端:冷帯〜寒帯に近い
緯度差・海流・標高差が組み合わさり、多様な気候性が形成されているわけです。
まとめ|ラテンアメリカの自然環境の重要ポイント
記事全体の内容を、テスト前・復習用に使えるよう最重要ポイントだけまとめました。
● 地形のポイント
- ラテンアメリカは西高東低の地形
→ 西:アンデス山脈(新期造山帯)
→ 中央〜東:ブラジル高原・ギアナ高地(安定陸塊) - アンデス山脈は火山・地震が多発
→ ペルー海溝・チリ海溝がある(プレート沈み込み帯) - ブラジル高原・ギアナ高地は安定陸塊
→ 鉱産資源(鉄鉱石)が豊富
● 河川のポイント
- アマゾン川:流量世界一。Af気候。熱帯雨林「セルバ」。
- オリノコ川:Aw気候。サバナ「リャノ」。牛の放牧。
- ラプラタ川:Cfa気候のパンパを流れる。農牧業が盛ん。
● 植生(森林・草原)のポイント
- セルバ(アマゾン):熱帯雨林。高温多雨。生物多様性が最大。
- リャノ(オリノコ):サバナ。乾季と雨季。放牧が中心。
- カンポ(ブラジル高原):疎林+草原。コーヒー・大豆の栽培地。
- パンパ(アルゼンチン):温帯草原。小麦・とうもろこし・牛肉。
- グランチャコ:亜熱帯の疎林。綿花栽培。
● 気候のポイント
- ラテンアメリカの60%が熱帯気候
→ Af、Aw、Amが広く分布。 - アルゼンチンはCfa(温帯湿潤)・BS(ステップ)
→ パンパ(農牧業)、パタゴニア(乾燥) - アンデス山脈は高山気候が広がる
→ 高度100m上昇で気温−0.6℃。垂直的自然帯が形成される。 - 寒流フンボルト海流が西岸を冷涼・乾燥させる
→ アタカマ砂漠の形成原因。
● 自然環境と人間活動のポイント
- 人口は大西洋側に集中(東側)
→ 低地が多く、気候が湿潤、貿易に有利。 - 農業は気候・植生に強く依存
→ セルバ=焼畑
→ サバナ=放牧・大豆
→ パンパ=穀物+牛肉 - アンデスに高山都市(ラパス・キト・クスコ)
→ 涼しい気候・高山作物(ジャガイモ・キヌア) - 自然環境が地域格差を生む
→ 砂漠(アタカマ)は鉱業中心
→ セルバは開発制限で人口が少ない
