宗教というと、何となく「神様を信じること」というイメージがあった。科学が発達した現代においては、神の存在やら宗教に出てくる神話やらを本気で信じている人は少数派だろう。
それにも関わらず宗教にまつわる行事が受け継がれている。もちろん、商業的に利用するのに都合がいいという面もあるかもしれない。日本におけるクリスマス、ハロウィンなどはまさにその典型だ。節分の恵方巻にしたってそうだ。もともとは関西の行事だったらしいが、今では全国に広まっている。
しかし、こうした商業的な面だけでなく本気で信じている人たちもいる。その信仰が原因で差別や紛争がいまだに起こっている。そこまでの行動に駆り立てる宗教とはなんなのか?という思いで本書を手に取った。
本書は5大宗教以外にも、比較的新しく生まれた新宗教、今日における宗教の役割と限界についても触れている。堅苦しい文体ではないので読みやすい。
5大宗教とは?
5大宗教とはユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教のこと。
ユダヤ教
ヤハウェという唯一神を信じる一神教。これは知っている人も多いだろう。実際には主(アドナイ)と呼ぶらしい。もとは中東の神々の一柱。それがなぜ唯一神になったのか?
安息日(休日)が土曜日
もともとイスラエルの民はエジプトで奴隷として働いていた。そのため、労働禁止の日を信仰の一部とした。今でも熱心なユダヤ教徒は調理すらせず前日に用意するらしい。
ちなみにユダヤ教から派生したキリスト教は日曜日を安息日としている。日本がこれを採用したのは明治時代に西洋の暦を取り入れたときだそうだ。それまで盆と正月以外は休むことがなかったそうだ。
年中行事が意外とある
考えてみると、日本だって仏教、神道の行事がたくさんあるのだら、ほかの宗教にも当然ある。2,3月に行われるプーリムという行事は、子供たちが仮装するというもの。ハロウィンの原型だろうか。
キリスト教
ユダヤ教から派生した。
イエス以外にも、自称メシアがたくさんいた。イエスにまつわる伝承が残っているが、どれも神話の域を出ない。今となっては真相はわからない。いずれにせよ、かなりのインパクトを残したらしい。
4世紀にはローマ帝国の国教となる
一方、キリスト教が興った中東地域では、しだいにイスラム教がひろまっていく。このあたりの経緯についてくわしく書いている本を読んでみたいと思った。
ユダヤ教とキリスト教のちがい。
ユダヤ教:民族の救済者。奴隷状態から解放した。
キリスト教:困っている個人の救済者。社会の最底辺の人々に寄り添う。西洋社会は、この隣人愛があるからこそビジネスライクな面も機能している。まさに車の両軸だ。
イスラム教
コーラン
ムハンマドの没後、教友(弟子のことか?)たちが暗記していた「アッラーの言葉」をまとめたもの。
コーランの内容は、キリスト教同様、社会的弱者を助けるというもの。当時のメッカは商業が発展した社会で格差が広がっていた。そんな中、アッラーの言葉(コーラン)は弱者にとって救いとなった。
このときの中東は、キリスト教ではなく多神教が信仰されていた。しかし、その教えの中に弱者救済はなったようだ。
イスラム教の歴史は比較的新しい。もとはユダヤ教、キリスト教から派生している。7世紀に誕生した。後発の宗教なのに、なぜ広範囲に広がったのか?イスラム教が誕生したときの社会背景を知ると納得できた。
イスラムの宗派
シーア派とスンナ派が有名だが、スーフィー派と呼ばれる神秘主義がある。それは仏教に似た瞑想中心の宗派だ。インド、東南アジアに広がったのは、この神秘主義の影響が大きいらしい。
西洋とのトラブル
トラブルの原因は3つある。
1つめは教理のちがい。同じ宗教のなかでも宗派による対立があるのだから、宗教が異なれば対立するのは不思議ではない。
2つめは政治的確執。パレスチナ問題が有名。
そして、3つめが世俗化の問題。現在の西洋諸国は、教会の神話に耳を傾けていない。科学、テクノロジーが発達してきたことで宗教全般に対する批判も強まっている。これと、宗教の戒律がしみついているイスラム系の移民の価値観が相いれないため衝突が起こる。
このあたりについて、くわしく書いているものを読んでみようと思う。科学、資本主義が発達した国々では宗教の戒律をきびしく守っている人は少数だろう。それに対して、イスラム教徒は戒律を守っている人が多い。外国人観光客のためにハラル表記をするほどだ。戒律をストイックに守るのはなぜなのか気になるところだ。
④ヒンドゥー教
⑤仏教
●宗教の分類p。18
●現代における宗教の役割p。176