化石燃料は、現代のエネルギーを支える最も重要な資源です。地理では「どこで産出されるのか」「輸入先・輸出先はどこか」「どのように運ばれるのか」がよく出題されます。本記事では、石炭・石油・天然ガスの特徴と世界の分布、主要な生産国・輸出国・輸入国を体系的にまとめて解説します。高校地理の学習者はもちろん、大人の学び直しにも最適です。シェール革命やOPECなどの内容は省き、基礎知識にしぼってわかりやすく説明します。
化石燃料とは?3つの種類と成り立ち
化石燃料とは、大昔の生物が地中で長い年月をかけて変化したエネルギー資源のことです。
地球上のエネルギーの多くは、この化石燃料に支えられています。
化石燃料には、主に次の3種類があります。
- 石炭…陸上の植物が起源
- 石油…海のプランクトンが起源
- 天然ガス…石油と一緒にできる気体の燃料
これらは、数千万年前の生物の死骸が地中深くに埋もれ、高い圧力と温度を受けることで、長い時間をかけて変質し、燃える資源になったものです。
まずは、この3つの燃料に共通する特徴や、なぜ化石と呼ばれるのかを整理していきます。
石炭・石油・天然ガスの共通点
石炭・石油・天然ガスの4つには、大きく分けて次の共通点があります。
① 生物がもとになってできた
化石燃料は、生物起源エネルギーとも呼ばれます。
- 石炭 → 陸上のシダ植物や森林
- 石油 → 海にすむプランクトン
- 天然ガス → 石油や有機物がさらに変化したもの
どれも、「大昔の生物」由来です。
② 地中深くで高い圧力と温度を受けて変化
生物の死骸が堆積し、その上に土や砂が積み重なると、高圧力・高温の環境になります。
この環境が何百万年も続くと、炭化・分解・変質が起こり、燃える資源になります。
③ 火力発電の燃料になる
化石燃料は、どれも火力発電の主要な燃料です。
- 石炭火力
- 石油火力
- ガス火力
特に天然ガスは、環境負荷が比較的小さいため世界的に使用量が増えています。
④ 枯渇する資源である
石炭・石油・天然ガスは、再生に数千万年単位の時間が必要です。
人類が使うスピードのほうが圧倒的に早いため、枯渇性資源と呼ばれます。
なぜ「化石」なのか
「化石燃料」という名前は、次の理由によります。
① 数千万年前の生物がもとになっているから
化石とは、大昔の生物の痕跡が残ったもの。
化石燃料は、化石そのものではありませんが、生物の死骸がもとになっている点が共通しています。
② 人類が使っても自然にはすぐ再生しない
化石は、自然が短期間で作れるものではありません。
化石燃料も同じで、再生に膨大な時間が必要であり、人間の利用速度に追いつかないため「化石」と呼ばれます。
③ 長い地質時代を経てできた資源である
石炭や石油は、地質時代(古生代・中生代など)に生きた生物が変化してできたものです。
地球の歴史を背景にもつ資源であることが、「化石」という名前につながっています。
現代でも化石燃料が使われ続ける理由
再生可能エネルギーが増えている現代でも、なぜ化石燃料は主要なエネルギー源のままでしょうか?
その理由は次の通りです。
① エネルギー密度が高い(多くのエネルギーが取り出せる)
化石燃料は、燃やしたときに非常に効率よくエネルギーを取り出せるという特長があります。
- 石炭 → 大量の熱を得られる
- 石油 → 輸送しやすく燃料として優秀
- 天然ガス → 発電効率が高い
日本でも世界でも、火力発電を支える重要燃料です。
② 安定して大量に供給できる
再生可能エネルギーとは違い、化石燃料は天候に左右されません。
- 石炭 → 長期保存できる
- 石油 → タンカーで世界中へ供給
- 天然ガス → パイプラインで大量輸送が可能
安定供給できることは、現代社会にとって大きな利点です。
③ 世界のエネルギーインフラが化石燃料に依存している
発電所、工場、輸送、家庭など、世界のあらゆる場所の設備が化石燃料に合わせて作られています。
- 火力発電 → 石炭・石油・天然ガス
- 自動車 → ガソリン
- 船・飛行機 → 重油・ジェット燃料
インフラが整っているため、急に完全移行するのは困難です。
④ コストが比較的安い
石炭・天然ガスは特にコストが安い燃料です。
コストが低いほど発電も安くできるため、多くの国が化石燃料を使い続けています。
⑤ 再生可能エネルギーは安定供給に限界がある
太陽光・風力は天候に左右されるため、大量の電力を安定して供給するのが難しい場面もあります。
そのため、現代でも「化石燃料+再生可能エネルギー」の組み合わせが一般的です。
石炭|古期造山帯に多いが新期造山帯にも分布
石炭は、古期造山帯(古い山脈)に多く分布するのが大きな特徴です。
ただし例外的に、新期造山帯にも産地が見られるため、「絶対に古期だけ」と覚えると間違えやすい分野でもあります。
ここでは、石炭の世界の主要産地、生産国・輸出国、輸送方法までをまとめて解説します。
世界の主な産地(古期造山帯中心だが例外も)
石炭は、古期造山帯(古い山脈)の地域で多く産出されます。
古期造山帯は、地球の歴史の中で古い時代に形成されたため、当時の植物が厚く堆積した地層が残りやすい。
■ 主な産地(古期造山帯・例)
- アパラチア山脈(アメリカ)
- 山西省(中国の華北地域)
- ドネツ炭田(ウクライナ・ロシア)
- ルール炭田(ドイツ)※近年は閉山が進む
- インドのデカン高原周辺
これらは地理で頻出の産地名。
■ 例外:新期造山帯にも産地あり
石炭=古期造山帯というイメージが強いですが、100%ではありません。
たとえば…
- インドネシア(新期造山帯)
- 日本(かつての筑豊炭田など)
新しく形成された山脈の地域でも、古い地層が隆起して表面に出ている場合があります。
★覚えておくべきポイント
石炭は“古期造山帯に多い”が、“新期造山帯にも例外がある”
→「地殻変動によって古い地層が押し上げられた」などの地質的理由
中国が世界の50%以上を生産
世界の石炭生産量は 中国が圧倒的1位。
なんと 世界全体の50%以上(半分以上) を中国一国で占めています。
■ 中国で石炭が多い理由
- 石炭を多く含む古い地層が広い
- 火力発電が多く、国内需要が非常に大きい
- 資源輸入を減らす「エネルギー自給率の確保」が重要視される
中国の石炭産地で特に有名なのは 山西省(さんせいしょう)。
地理の問題でよく登場します。
中国の次に多い国
- インド
- インドネシア
- アメリカ
- オーストラリア
石炭の主要輸出国(インドネシア・オーストラリア・ロシア)
世界の「輸出」に注目すると、生産国とは別の順位になります。
特に重要なのは次の3か国。
① インドネシア(世界最大の輸出国)
輸出量は世界トップ。
アジアに近く、日本や中国が多く輸入。
② オーストラリア
品質の高い石炭が多く、安定した供給国。
日本の発電用石炭の主要な輸入先。
③ ロシア
ヨーロッパとアジアの両方に輸出。
シベリアの炭田が中心。
■ 重要:生産国と輸出国の違い
- 中国は生産は1位でも、輸出はほとんどしない。国内消費が大きい。
- インドネシアや豪州は輸出を中心とする「資源国」。
石炭の輸送方法(バラ積み船)
石炭は固体なので、専用のバラ積み船(Bulk Carrier) で運ばれます。
■ バラ積み船の特徴
- そのまま積む(袋詰めしない)
- 大量に輸送できる
- コストが安い
■ なぜ安いのか?
石炭は燃料として大量に使うため、輸送コストが上がると電気料金にも影響します。
バラ積み船は一度に大量を積めるため、単価が非常に安くなるのです。
★覚えるポイント
石炭=バラ積み船
石油=タンカー
天然ガス=LNG船 or パイプライン
輸送手段の違いは、地理で超頻出。
石油|中東に多い世界最大のエネルギー資源
石油は、世界で最も重要なエネルギー資源です。
発電、輸送、工業製品など、多くの場面で利用されており、国際政治にも大きな影響を与える資源として扱われています。
地理では特に、
- 原油と石油の違い
- 中東に集中する理由
- 生産国・輸出国・輸入国のランキング
- 石油を運ぶタンカーと海峡
などが頻出ポイントです。
ここでは、石油の基礎知識を順に整理していきます。
原油と石油の違い(精製のしくみ)
地理では「原油」と「石油」が区別されることが重要です。
① 原油(crude oil)とは?
- 地中からそのまま出てくる油のこと
- 黒色〜茶色の粘りのある液体
- このままでは使えない場合が多い
② 石油(petroleum)とは?
精製(せいせい)と呼ばれる工程で、原油を加熱して成分を分けてつくる燃料全般。
代表例:
- ガソリン
- 灯油
- 軽油
- ジェット燃料
- 重油
→ “石油=加工された原油”と覚えるとわかりやすい
③ 精製のしくみ|「分留(ぶんりゅう)」
原油を熱すると、沸点の差で成分が分かれる。
沸点の低い順から:
- LPG(液化石油ガス)
- ガソリン
- ナフサ(プラスチック原料)
- 灯油
- 軽油
- 重油
石油化学工業の基礎になるため、入試でもよく問われます。
原油の世界分布|中東の特徴
世界の原油は、中東地域(西アジア)に集中しています。
① 中東が石油の宝庫である理由
約1億〜2億年前、
- この地域は浅い海が広がっていた
- プランクトンが大量に堆積
- 地殻変動で石油が閉じ込められた
その結果、世界最大級の油田が形成されました。
② 中東の主要産油国
地理で覚えておくべき代表国:
- サウジアラビア
- イラク
- イラン
- UAE(アラブ首長国連邦)
- クウェート
いずれもペルシャ湾沿岸に分布。
③ 中東の特徴のまとめ
- 世界の確認埋蔵量の約半分
- 生産・輸出ともに世界トップクラス
- 日本を含むアジアが大量に輸入
石油資源は国際関係にも大きな影響を与えるため、地理でも非常に重要な項目です。
原油生産国ランキング(ベスト10)
※順位は年により変動するため、ここでは“傾向として必ず覚えるべき国”を中心に整理します。
● 生産量トップクラス
- アメリカ
- サウジアラビア
- ロシア
→ この3か国は常にトップ争い。
● その他の上位生産国
- カナダ
- イラク
- 中国
- アラブ首長国連邦(UAE)
- イラン
- ブラジル
- クウェート
★地理で重要ポイント
- アメリカが1位になった理由 → シェールオイル(※詳細は別記事)
- 中東諸国が上位に多い
- 中国も生産量が大きいが輸入量も多い(後述)
原油輸出国ランキング(ベスト10)
輸出量では、中東とロシアの存在感が大きい。
● 輸出量トップクラス
- サウジアラビア
- ロシア
- イラク
→ “輸出”ではアメリカは上位に来ない点が重要。
● その他の輸出国
- カナダ
- UAE
- クウェート
- ナイジェリア
- カザフスタン
- アンゴラ
- ノルウェー
★ポイント
- 中東とロシアが世界の石油供給の中心
- アメリカは生産1位でも輸出はほぼしない → 国内消費が大きい
原油輸入国ランキング(ベスト10)
輸入量の上位国は、人口や工業生産が多い国が中心です。
● 輸入量トップクラス(超重要)
- 中国
- アメリカ
- インド
→ 中国は世界最大の輸入国。
→ アメリカは生産1位なのに輸入も多い(国内需要が巨大)。
● その他の輸入国
- 日本
- 韓国
- ドイツ
- オランダ
- イタリア
- スペイン
- フランス
★地理で重要
- 日本は石油の約90%を中東に依存
- ヨーロッパはロシアからのパイプラインに依存(※状況により変動)
石油の輸送方法(タンカー・ホルムズ海峡など)
石油は液体燃料なので、タンカー(大型の油を運ぶ船)で世界中に輸送されます。
① タンカー輸送の特徴
- 大量輸送が可能
- 国境を越えて運べる
- 中東 → アジア・ヨーロッパの主要ルートで活躍
② 地理で重要な海峡・運河
石油輸送の「 chokepoint(チョークポイント=重要地点)」として特に重要なのが以下の3つ。
● ホルムズ海峡(超頻出)
- イランとオマーンの間
- 中東の石油タンカーが必ず通る
- 世界の石油輸送の生命線
● マラッカ海峡(東南アジア)
- シンガポール周辺
- 中東 → 日本・中国・韓国のルート
→ 日本の石油輸入にも大きくかかわる。
● スエズ運河(エジプト)
- 地中海と紅海を結ぶ
- 中東 → ヨーロッパのルート
- アフリカ周りよりも大幅に距離短縮
③ パイプラインでの輸送(補足)
石油は基本タンカーだが、陸続きの国同士ではパイプラインも利用される。
例:
- ロシア → 欧州
- イラク → トルコ
ただし天然ガスほどパイプライン依存ではない。
以下に、指定いただいた 「天然ガス」パートの本文 を、地理の重要ポイントを押さえつつ、読みやすく丁寧にまとめました。
そのままブログに貼り付けられる完成度です。
天然ガス|二酸化炭素が少ないクリーンな化石燃料
天然ガスは、化石燃料の中でも環境への負荷が比較的小さいクリーンなエネルギーとして、近年特に注目されています。
石炭や石油と同じく地中でできたエネルギー資源ですが、気体である点が大きな特徴です。
地理では、
- 天然ガスの特徴
- 生産国の順位
- LNG(液化天然ガス)とパイプラインの違い
- 輸出国・輸入国
が頻出ポイントです。
ここでは、それぞれをわかりやすく整理します。
天然ガスの特徴とメリット
天然ガス(natural gas)は、石油に伴って産出される気体の資源であり、「非在来型ガス」や「シェールガス」なども含む広い概念です。
① 燃やしたときの二酸化炭素排出量が少ない
同じ量のエネルギーを得るとき、
- 石炭 > 石油 > 天然ガス
の順でCO₂排出量が少なくなります。
そのため、火力発電でも天然ガスは「比較的クリーン」と評価されています。
② 発電効率が高い
天然ガスを使うガスタービン発電は、最新設備では発電効率が非常に高く、
石炭火力より低コストで運転できる場合もあります。
③ 使い道が多い
天然ガスはさまざまな用途に使われます。
- 火力発電
- 家庭用ガス(都市ガス)
- 工場・化学産業の燃料
都市ガスの原料として使われるため、生活にも直結するエネルギーです。
④ メタンが主成分
天然ガスの主成分は メタン(CH₄)。
無色・無臭で、安全のために匂いを付けて使われています。
アメリカとロシアで世界の40%以上を生産
世界の天然ガス生産は、少数の国に集中しています。
なかでも重要なのが アメリカとロシア の2か国。
● アメリカ
- 世界最大の天然ガス生産国
- シェールガス革命により生産が急増
- 国内消費も非常に多い
● ロシア
- 世界有数の天然ガス資源国
- 欧州向けのパイプライン網が発達
- 生産量の多くがヨーロッパに輸出されてきた(政治的問題により変動あり)
▶ 2国だけで世界の40%以上
地理で重要なのは、この数字です。
アメリカとロシアで天然ガス生産量の40%以上を占める
さらに上位には以下の国が続きます。
- イラン
- カナダ
- カタール
- 中国
- オーストラリア
天然ガスは偏在性が強く、特定地域に集中していることが特徴です。
LNGとパイプラインでの輸送
天然ガスの輸送方法は、液化(LNG)するか、パイプラインを使うかで大きく分かれます。
① LNG(液化天然ガス)輸送
天然ガスを –162℃ に冷却すると液体になる。
これを LNG(Liquefied Natural Gas) と呼びます。
● LNGの特徴
- 体積が約600分の1になる → 大量輸送が可能
- 国境をまたぐ海上輸送ができる
- 日本・韓国・台湾など、島国で最も重要
● 輸送手段:LNGタンカー
専用タンクを持つ大型船で運ばれる。
- 日本の天然ガス輸入のほぼ100%がLNG
- アジアのエネルギー供給に欠かせない
② パイプライン輸送
地上・海底に敷いた管で、長距離を輸送する方法。
● パイプラインの特徴
- 一度整備すると大量・安価に運べる
- 陸続きの国同士で重要
- ロシア → 欧州への供給が代表例
● LNGとパイプラインの違いの覚え方
- 海を越える → LNG
- 陸続き → パイプライン
どちらが使われるかは地理的条件で決まります。
主なLNG輸出国・輸入国
最後に、地理のテストで特に問われやすい
主要輸出国・輸入国の傾向 をまとめます。
● 主な輸出国
- カタール(世界トップクラス)
- オーストラリア(近年急増)
- アメリカ(シェールガスで輸出国に)
- マレーシア
- ロシア
★覚えるポイント
天然ガスはアメリカとロシアで生産が多いが、 LNG輸出はカタールとオーストラリアが強い。
これは「パイプライン vs LNG」の違いによるもの。
■ LNG輸入国(アジアが中心)
輸入側は圧倒的に アジア太平洋地域。
● 主な輸入国
- 日本(世界有数のLNG輸入国)
- 中国
- 韓国
- インド
- 台湾
★超重要ポイント
日本は天然ガス(LNG)のほぼ100%を輸入に依存している。
島国でパイプラインが敷けないため、LNGが生命線になっている。
✔ 地理の得点ポイントまとめ(天然ガス)
- 天然ガスはCO₂排出が少ない
- アメリカ・ロシアが40%以上を生産
- LNGは–162℃で液化、LNGタンカーで輸送
- パイプラインは陸続きで利用
- 輸出はカタール・豪・米
- 輸入は日本・中国・韓国
以下に、指定いただいた 「化石燃料のメリット・デメリットまとめ」パートの本文 を、受験でも使えるレベルでわかりやすく丁寧に仕上げました。
化石燃料のメリット・デメリットまとめ
石炭・石油・天然ガスは、世界のエネルギーを支えてきた中心的な資源です。
近年は脱炭素や再生可能エネルギーが注目されていますが、化石燃料がいまだに重要視される理由があります。
ここでは、化石燃料のメリットとデメリットを整理し、地理で押さえるべきポイントをまとめます。
メリット(高エネルギー密度・安定供給など)
化石燃料は、再生可能エネルギーと比較して多くの利点があります。
世界中で長く使われ続けてきたのには明確な理由があります。
① エネルギー密度が高い(効率がよい)
化石燃料は単位量あたりに取り出せるエネルギーが大きい。
- 石炭 → 大量の熱エネルギー
- 石油 → ガソリン・灯油などの高効率燃料
- 天然ガス → 発電効率が非常に高い
少ない量でも大きなエネルギーを得られるため、産業や発電に向いています。
② 天候に左右されず安定供給できる
太陽光や風力などの再エネは天候の影響を大きく受けます。
一方、化石燃料は
- いつでも一定の量を燃やせる
- 発電量を自由に調整できる
という大きなメリットがあります。
そのため、電力の「ベースロード(基幹電源)」として利用されてきました。
③ 大規模な発電インフラが整っている
火力発電は世界中に設備が整備されており、すぐに使える状態になっています。
- 石炭火力
- 石油火力
- ガス火力
特に天然ガス発電は効率が高く、近年世界的にシェアが増加しています。
④ 輸送・貯蔵が容易でコストが安い
- 石炭 → バラ積み船で大量輸送
- 石油 → タンカーで世界中へ
- 天然ガス → LNG船やパイプラインで輸送
これらの輸送網が既に発達していることから、コストも安く、世界中で利用しやすいエネルギーとなっています。
⑤ 工業製品の原料としても重要
石油は、燃料だけでなく
- プラスチック
- 洗剤
- 衣類の合成繊維
- 医薬品
など、多くの製品の原料にもなる。
化石燃料は「燃やすだけではない」という点も重要です。
デメリット(CO₂排出量・環境負荷など)
一方で、化石燃料には深刻なデメリットもあります。
① CO₂の排出量が多い(温室効果ガス)
化石燃料を燃やすと大量の二酸化炭素(CO₂)が排出されます。
CO₂排出量(多 → 少)
石炭 > 石油 > 天然ガス
温室効果ガスが地球温暖化の原因となり、国際的な問題になっています。
② 大気汚染や酸性雨の原因になる
石炭や重油を燃やすことで、
- SO₂(硫黄酸化物)
- NOₓ(窒素酸化物)
などが発生し、大気汚染や酸性雨につながることがあります。
工業化の進んだ地域では特に大きな環境問題となりやすい。
③ 資源が偏在しており、政治的リスクが大きい
化石燃料は世界の一部の地域に集中しています。
- 石油 → 中東に集中
- 天然ガス → ロシア・アメリカに集中
- 石炭 → 中国・インドなどに多い
そのため、産地の政治不安が世界供給に影響しやすいという問題があります。
(例)ホルムズ海峡、ロシアのパイプライン問題など
④ 枯渇する資源である(再生に数千万年)
化石燃料は、一度使うとなくなる資源です。
再生には地質学的時間が必要で、人間の利用ペースに追いつきません。
そのため、「持続可能性」の観点から使用削減の動きが進んでいます。
⑤ 災害・事故のリスクがある
- 油田火災
- タンカー事故(海洋汚染)
- ガス漏れ、爆発事故
といったリスクも伴います。
地理で押さえるべきポイント
最後に、高校地理で得点につながる内容をまとめます。
✔ ① 石炭・石油・天然ガスの分布の違い
- 石炭 → 古期造山帯中心(中国・インド・米など)
- 石油 → 中東中心(サウジ・イラク・イラン)
- 天然ガス → 米・ロシアが突出
これを正確に整理して覚えること。
✔ ② 輸送手段の違い
| 資源 | 輸送方法 |
|---|---|
| 石炭 | バラ積み船 |
| 石油 | タンカー、重要海峡(ホルムズ海峡など) |
| 天然ガス | LNG船・パイプライン |
輸送の方法は入試頻出。
✔ ③ 生産国・輸出国・輸入国の違い
特に重要なポイント:
- 中国は石炭生産は多いが輸出は少ない
- アメリカは原油生産1位だが輸入も多い
- 中東は輸出国が多い
- 日本は石油の約90%、天然ガスのほぼ100%を輸入
「生産=輸出ではない」点が地理のひっかけ問題で多い。
✔ ④ CO₂排出量の違いを覚える
石炭 > 石油 > 天然ガス
自然と比較されるので暗記必須。
✔ ⑤ 化石燃料の“利点”と“課題”を両方言えるように
- 利点 → エネルギー密度が高い・安定供給・低コスト
- 課題 → 温暖化・資源偏在・枯渇性
地理の記述問題でよく使う内容です。
以下に、本記事全体の内容を総復習できる一問一答(全40問) を作りました。
高校地理のテスト対策・大学受験の基礎固め・ブログ読者の復習用としてそのまま使えます。
化石燃料まとめ|一問一答(全40問)
【石炭編】
Q1:石炭はどんな生物が起源となってできた資源ですか?
A:陸上の植物
Q2:石炭が形成されるときに生まれる、植物の堆積物を何と呼ぶ?
A:泥炭(でいたん)
Q3:石炭は主にどんな地帯に多く分布しますか?
A:古期造山帯
Q4:石炭の世界最大の生産国は?
A:中国
Q5:中国の石炭生産量は世界全体の何%以上?
A:50%以上
Q6:石炭の主要輸出国トップ3をすべて答えよ。
A:インドネシア、オーストラリア、ロシア
Q7:石炭の輸送に使われる船の名前は?
A:バラ積み船(Bulk Carrier)
Q8:石炭が多い古期造山帯の例を1つ答えよ。
A:アパラチア山脈、ウラル山脈、山西省など(いずれも正解)
【石油編】
Q9:原油と石油の違いを簡単に説明せよ。
A:原油は地中からそのまま出る油、石油は原油を精製した燃料。
Q10:原油を熱して成分ごとに分ける操作を何という?
A:分留(ぶんりゅう)
Q11:石油は主にどの生物が起源ですか?
A:海のプランクトン
Q12:世界の原油埋蔵量が最も多い地域は?
A:中東
Q13:原油生産量1位の国は?
A:アメリカ
Q14:原油生産量上位3か国を答えよ。
A:アメリカ、サウジアラビア、ロシア
Q15:原油輸出量1位の国は?
A:サウジアラビア
Q16:原油最大の輸入国は?
A:中国
Q17:日本が石油の約90%を依存している地域は?
A:中東
Q18:中東から日本・中国・韓国などに向かう石油タンカーが必ず通る海峡は?
A:ホルムズ海峡
Q19:中東とヨーロッパを結ぶ重要な運河は?
A:スエズ運河
Q20:石油の海上輸送に使われる船は?
A:タンカー
【天然ガス編】
Q21:天然ガスの主成分は?
A:メタン(CH₄)
Q22:CO₂排出量が最も少ない化石燃料は?
A:天然ガス
Q23:天然ガスは気体だが、輸送のために液体にしたものを何という?
A:LNG(液化天然ガス)
Q24:天然ガスを液化する温度は約何℃?
A:−162℃
Q25:天然ガス生産量の上位2か国は?
A:アメリカ、ロシア
Q26:アメリカとロシアで世界生産量の何%以上を占める?
A:40%以上
Q27:LNGを運ぶ専用の船を何という?
A:LNGタンカー
Q28:陸続きの国同士で天然ガスを送るために使われる設備は?
A:パイプライン
Q29:パイプライン輸送が特に発達している天然ガス産出国は?
A:ロシア
Q30:近年LNG輸出量が大きい国を2つ答えよ。
A:カタール、オーストラリア(アメリカも増加中)
Q31:LNG輸入国で世界上位にあるアジアの国を3つ答えよ。
A:日本、中国、韓国
【化石燃料のメリット・デメリット編】
Q32:化石燃料のメリットの1つ「エネルギー密度」とは何を意味する?
A:少ない量で大きなエネルギーを取り出せること
Q33:化石燃料はどのような理由で「安定供給」しやすい?
A:天候に左右されず、自由に発電量を調整できるため
Q34:石油・石炭・天然ガスのうち最もCO₂排出量が多いのは?
A:石炭
Q35:化石燃料の最大の環境デメリットは?
A:温室効果ガス(CO₂)を大量に排出すること
Q36:石炭・石油・天然ガスは再生可能な資源か?
A:再生不可(枯渇性資源)
Q37:化石燃料が政治的リスクを持ちやすいのはなぜ?
A:分布が偏在し、中東・ロシアなど特定地域に集中しているため
Q38:石油の輸送で「 chokepoint(チョークポイント)」とは何か?
A:石油輸送の要所となる狭い海峡・運河のこと
Q39:化石燃料がいまだに世界の主要エネルギーである理由を1つ答えよ。
A:コストが安く、インフラが整い、安定供給できるため
Q40:地理で化石燃料を学ぶ上で最も重要な視点を1つ挙げよ。
A:分布・輸送・生産と輸出入の違いを正しく比較すること
